明治ホールディングスでは、取締役会の機能強化を図り実効性のあるコーポレート・ガバナンスを確立するため、2017年6月より取締役会を社内取締役7名、独立社外取締役3名の構成としました。ここでは、2009年の明治ホールディングス発足時より社外取締役を務めて頂いている佐貫葉子氏に加え、2016年6月の株主総会で新たに選任された岩下智親氏、村山徹氏の3名に、明治グループのコーポレート・ガバナンスや持続的成長に向けた考え方など、幅広いテーマに関して熱く語って頂きました。

Q:
最近の取締役会の雰囲気や変化として感じていることをお聞かせください。
佐貫:
私はこれまで8年間に亘って社外取締役を務めておりますが、最近の取締役会は、議題が多くなったにもかかわらず実質的な議論がなされており、とても活発化したと感じています。昨年は、事業会社の担当役員から直接事業概況を聞く機会を設けていただいたことで、各部門ごとの事業内容をより深く理解できました。このように事業会社の担当役員とコミュニケーションすることで「現場」を感じることができたことは、私にとって貴重な経験となりました。さらに、取締役会に付議される前に開催されている経営会議(社内役員で構成される会議体)で議論された内容を取締役会で報告していただいているのも、論点を理解するのにとても役にたっています。
岩下:
コーポレートガバナンス・コードを形式的に満たすことに躍起になっている会社も見られる中で、明治ホールディングスは形式的ではなく実効性のあるガバナンスを実現していると思っています。社外取締役の意見を積極的に求め、たとえそれが耳の痛い話であっても取り入れようとする前向きな姿勢に感心しています。また、私たち社外取締役に対して社内情報を数多く提供してもらえることも高く評価しています。先般公表した「明治グループ2026ビジョン(骨子)」の策定にあたっては、私たち社外取締役も交えて長時間にわたり何度も議論を重ねました。こうした点からも明治ホールディングスのコーポレート・ガバナンスが進化しつつあることが窺われます。課題を挙げるとしたら、執行役員を兼任する社内取締役は、自分の分掌業務の発言にとどまらず、取締役として明治グループ全体に対する意見をより積極的に述べるべきだと思います。
村山:
取締役会ではしっかりとした議事進行を行なっており、議論すべきことを議論していると思います。ホールディングスとして両事業会社を管理・監督する機能は十分働いており、また3社は非常に良い関係を構築していると感じています。
Q:
これからのホールディングスとして果たす役割について、お考えをお聞かせください。
村山:
明治製菓と明治乳業が統合して新たな明治グループが発足した際には、企業理念や価値観の共有から始まり、新たなビジョンづくり、ビジョンから落とし込んだ事業計画づくり、その事業計画の実行状況フォローといったプロセスを経てきたはずです。ここまでの明治ホールディングスは、こうしたプロセスを上手にコントロールしながらグループの一体化を進め、大成功を収めたと言えるでしょう。ただし、長期的視点で見ると、いまだに道半ばであり、今後は明治ホールディングスとして担う新たな使命が出てくるのではないかと思っています。
岩下:
往々にして起きやすい、過度に管理的なホールディングスや肥大化したホールディングスといった問題が生じることもなく、非常に良い形で明治ホールディングスと両事業会社との関係が構築されました。
佐貫:
2009年の経営統合で明治ホールディングスが発足し、その後の2011年に実施した事業再編という大きな経営課題に対して明治ホールディングスは重要な役割を果たしてきました。今後は、事業再編の次の課題に取り組まなければいけません。これまでの成功に安住することなく、危機感を持った活発な議論が求められます。
Q:
明治グループの独自の強みと課題はどこにあるとお考えでしょうか。
村山:
明治グループは非常に「真面目、堅実、慎重」な会社であると評価しています。それが現在の好業績につながっているのでしょう。ただ、「真面目、堅実、慎重」は、ときにスピードの欠如につながる危険性もあるので、もっとスピードを上げて素早く取り組むことにも留意して欲しい。また、少し謙虚な点が気になります。明治グループは、長年の歴史の中で培ってきた有形・無形の素晴らしい資産をたくさん持っています。このことをもっと誇りに思って社内外にPRしてもよいのではないでしょうか。
岩下:
「真面目」という点では、乳酸菌研究やカカオポリフェノール研究などの基礎的研究開発に真摯に取り組んでおり、これが有形・無形の大きな資産となり、「強み」にもなっていると評価しています。こうした資産はもっともっと活用できるのではないかと思います。
村山:
明治グループは、実はとても「革新的」な会社だと思っています。例えば、食品セグメントが取り組んでいる「選択と集中」によるSKUの削減は、調達、生産、営業などのマネジメントのあり方に大きな影響を及ぼすため、実行するには思った以上に困難が伴う課題です。しかしながら、これをやり遂げたというのはまさに革新的と言えます。また、医薬品セグメントでは、インドのメドライク社の買収したことでジェネリック医薬品ビジネスの拡大に向けて大きな推進エンジンを獲得しました。この決断も非常に革新的です。
岩下:
選択と集中を強力に推進した菓子事業では、2011年の事業再編時に比べて営業利益率が5倍になりました。私の常識ではなかなか考えにくいことですが、それを成し遂げてしまったことは「すごい!」の一言です。
佐貫:
明治グループの強みを活かしたとても優れた取り組みをしているにもかかわらず、必ずしも社内で十分周知されていないと感じることがあります。例えば、チョコレート原料であるカカオ豆調達の取り組みでは、アフリカや中南米のカカオ農家を取り巻く環境を改善して地元のカカオ生産を持続可能なものにしてゆくという農家への支援活動を積極的に行っています。こうした画期的な取り組みが遍く周知されていないことは残念なことです。もっと社内PRにも努めてはどうでしょうか。
Q:
今後の持続的な成長に向けて、特に海外展開やダイバーシティなどの観点からお考えをお聞かせください。
村山:
単に海外に出ていくだけで売上が上がるというのは甘い考えです。まず、日本におけるナンバーワン商品をつくることが必要です。日本でナンバーワンになるということは、商品に高い付加価値があるということであり、海外においても十分通用する可能性が高まります。明治グループが持つ独自の付加価値を海外でも展開すべきです。明治グループの海外売上高比率は、まだまだ低いのですが、慎重な経営姿勢や従業員の外国人比率も低いことなどもあって、海外展開のスピードは遅くなったのかもしれません。展開のスピードアップも含めた新たな海外戦略が必要になるでしょう。
岩下:
ダイバーシティという点では、社内の意識は少し希薄かもしれません。自分の会社の文化や常識に染まっていると、さらなる「革新」を求めていくのは難しくなります。外部との共同研究・交流を積極的に行ったり、中途採用や出向を増やして、社内にいろいろな血を混ぜることで新たな発想が生まれ易くなると思います。
村山:
明治グループは、実は異文化を上手に活用できる会社ではないかと思っています。というのも、明治グループは明治製菓と明治乳業という異なる2社の文化を統一し、またインドのメドライク社を買収後、着実にオペレーションを軌道に乗せる業務も進行しています。グループ内の人事交流や異動も上手に行っており、こうしたことが近年の好業績にもつながっていると考えられます。外国人や中途採用者が増えたとしても同じように上手くやれることを期待しています。
佐貫:
社員を異業種の企業に出向させる、あるいは逆に他企業や役所の人材を受け入れるといった取り組みも異文化の吸収につながります。明治グループの本業と、一見何の関係もない企業からでも学ぶべきことはたくさんあるはずです。こうすることにより社外の人脈も広がり、社内は革新的な気風に変化していくように思います。
村山:
海外展開するにあたっては、現地の組織をしっかり管理できる人材が必要で、その人材は日本人に限定する必要はなく、当然外国人も対象となります。グローバルに勝負できる商品は数多く持っているのに、人材不足を理由に海外展開のスピードを減速させることは避けるべきです。
Q:
最後に、今後の明治グループへの期待や社外取締役としての抱負についてお聞かせください。
佐貫:
明治グループは2011年の事業再編以降、ここまで順調に成長してきましたが、次の成長を目指して新たな絵を描く時期にきています。その基本となるのが「2026ビジョン(骨子)」になるわけですが、その具現化、実現化へ向けて私たちも新たな役割を担っていかねばならないと思っています。
岩下:
「2026ビジョン(骨子)」をいかに実現するか。それには、やはり戦略と課題を明確にして、社員一人一人にまで共有・浸透させ、徹底して実行していくことだと思います。
私は明治グループの持つ強みをまだ出し切れていないので、もっと成長することができると信じています。一層の発展を強く期待しています。
村山:
今の明治グループのビジネスは既に成熟していると思っている人がいるかもしれませんが、これはとんでもない間違いです。「健康」という軸で考えたら、明治グループは成長産業ど真ん中にいると言えます。「2026ビジョン(骨子)」の実行を徹底することで、十分に次の成長に向けたスタートを切れると思っています。ビジョンの実行がさらに加速できるように、支援や助言など、私なりに出来ることをやっていくつもりです。