事業の知財戦略と事例
明治グループは①戦略的活動の推進、②ガバナンスの確立、③情報発信の強化を知的財産戦略の骨子と定め、食品・医薬品の各セグメントの事業戦略や研究開発戦略に合致した知的財産戦略を構築し、推進しています。
食品事業
食品セグメントの知的財産戦略は、事業展開のグローバル化を見据えて、世界に通用する質の高い技術を開発し、重要な市場である国や地域において多くの特許出願・特許権の取得を展開することで、他社への強力な牽制あるいは他社との提携を可能にします。「グローバル×質」による知的財産戦略の推進によって事業利益の拡大に貢献します。
さらなるグローバル化と質の向上を目指す
下図は、保有特許から算出した食品系大手企業のグローバル化度(横軸)と技術的価値評価(縦軸)を示したものです。明治グループの食品セグメントの知的財産のグローバル化および技術的価値評価は、いずれも2023年度より上昇傾向が見られます。キューブタイプ粉ミルクや含水チョコレートなど事業戦略上重要な商品に関する特許群は、グローバル化への対応が進められています。事業戦略や商品戦略と連携して特許ポートフォリオの価値を向上させることで、市場拡大や収益性向上を知的財産面から後押ししています。

※レクシスネクシス社の特許分析ツール「LexisNexis® PatentSight+」を用い当社作成
医薬品事業
医薬品セグメントの知的財産戦略は、一つの製品に対して複数の特許権を獲得し、強固な特許ポートフォリオを構築するとともに、特許の質を高めることで特許総合力の向上を図り、さらに他の知的財産権と組み合わせることで競争優位性を確保しています。
グループ内で知的財産アセットを活用・強化
右図は、医薬品セグメント2社の保有特許を俯瞰解析ツールでプロットしたものです。KMバイオロジクス(株)は感染症予防領域、Meiji Seika ファルマ(株)は感染症治療領域にそれぞれ強みを持っており、これらを融合したシナジー創出を目指しています。また、感染症領域(予防・治療)に加え、「免疫制御」をキーワードとする血液領域(血漿分画製剤などのたんぱく質関連、血液がん)や免疫炎症領域でも新たな技術の獲得を進めています。知的財産戦略においてもこうした事業戦略と連携し、引き続きグローバルな特許権獲得を通じたシナジー効果の最大化と事業収益の拡大に貢献していきます。

※VALUENEX社の俯瞰解析ツール「VALUENEX Radar」を用い当社作成
特許による価値創造ストーリー
特許を活用して独自の価値を生み出すmeijiらしい事例を紹介します。
当社独自の研究により、紫外線による肌への刺激をやわらげ、肌を保護することを助けてくれます(特許第7061560号)。毎日のヨーグルトで体の内側からの紫外線・乾燥ケアをし、健康的な肌を目指すかたにオススメです。「明治Wのスキンケアヨーグルト」は機能性関与成分であるL. bulgaricus OLL1247株およびS. thermophilus 3078株(SC-2乳酸菌)、コラーゲンペプチド、スフィンゴミエリンの働きにより、紫外線刺激から肌を保護するのを助ける機能、肌の潤いを保ち、肌の乾燥を緩和する機能、2つの機能が報告されている機能性表示食品のヨーグルトです。
「ザバスミルクプロテイン」シリーズは、2015年の発売以来、累計10億本販売を突破している、プロテイン市場で売上No.1※1のプロテインドリンクです。中でも「ザバスミルクプロテイン」(酸性飲料※2)は、運動後でもすっきり飲みやすい風味を追求しているだけではなく、独自の製造技術である速攻吸収製法により、体内へのミルクプロテイン吸収スピードを速めています(特許第6895257号)。
通常、ミルクプロテインを牛乳などの中性飲料で摂取した場合、胃内で凝固してから分解・吸収されるため吸収に時間がかかります。しかし、速攻吸収製法では酸性域でミルクプロテインを安定化させることで凝固を防ぎ、より速い吸収を実現しました。
また、カラダづくりに役立つビタミンやカルシウムを配合、脂肪ゼロという栄養設計で、理想のカラダづくりをサポートします。
※1インテージSRI+プロテインドリンク市場2024年1月~12月ブランド別累計販売金額
※2「ザバスミルクプロテイン脂肪0ヨーグルト風味」、「ザバスミルクプロテイン脂肪0フルーツミックス風味」
明治のチョコレートは、舌の先でもざらつきを感じないほど細かく、なめらかな口どけを実現しています。製造工程では、機械で攪拌されながら冷却したあとに再加熱する工程で、よりきれいなツヤを出すためチョコレートの特性に応じた精密な温度調整を施します。その後、出来上がったチョコレートはお店や倉庫に運ばれて行きますが、搬送路の品質管理も大切にしています。
チョコレートを搬送する通路も外気温の影響を受けないよう空調管理を徹底。搬送先の保管場所から出荷口にいたるまで、すべてのエリアに温度センサーを設置して、「23℃以下」を24時間365日自動で制御しています。
さらに明治では、ナッツ・ビスケット等と組み合わせたチョコレートの保管に関する特許技術(特許第5464968号)を保有しています。倉庫内の温度を、季節に応じて15℃~23℃の間で周期的に変動させることで、ファットブルームを防止し、チョコレートのおいしさとつやつやの見た目を保つことができます。
「明治ほほえみらくらくキューブ」は、業界初のキューブタイプの粉ミルクです。必要数のキューブを哺乳瓶に入れるだけで、誰でも簡単に正確にミルクを作ることができます。
乳児にとって最良の栄養である母乳を徹底的に研究して生まれた「明治ほほえみ」を、添加物を一切加えることなくキューブ状に固めました。これにより、粉ミルクを使う際によくある「計量の手間」や「こぼれる心配」といった困りごとを解決する画期的な利便性向上を実現しています。
独自のキューブ製法技術では、「低圧縮による成型」と「加湿乾燥による硬化」にて、輸送に適した硬度や「明治ほほえみ」と変わらない溶解性を実現しました。「低圧縮成型」により製造工程での脂肪のしみ出し防止による「明治ほほえみ」と変わらない保存性の維持や溶解性を確保しました。これにより、添加物を使わずに、持ち運び時に壊れにくいのにお湯に溶ける便利なキューブ剤型を実現しました。