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グエン・ティ・ビック・フォンNguyen Thi Bich Phuong

メイジフードベトナム 栄養士

髙井 淳Jun Takai

メイジフードベトナム 社長

ベトナムでは、経済が急成長する一方で、女性の"低栄養"が課題になっています。その現状を変えようとする明治グループの取り組みを紹介します。

数多くのバイクが行き交う、活気あふれる街――。この数十年で、ベトナムは大きな経済成長を遂げました。世界銀行の統計では、2002年比で国民一人あたりGDPは約3倍、貧困率は2011年の32%から2%を切るまでに低下しました。

これほどの成長の陰には、多くの「働く女性」たちの存在があります。働くことができる年齢の女性のうち、実際に就業している人の割合はなんと約70%にも上ります。IMF(国際通貨基金)によると、この数値はアジア平均から20ポイントも高いだけでなく、欧米先進国と比べても高水準です。その職業はさまざまで、農業や工場で働く人もいれば、ハイスキルをいかして働く人もいます。子どもの頃から男女平等を重視した教育を行っていることや、出産や職場復帰に関する手厚い制度が整えられていることなど、何十年もかけてつくり上げられてきた社会の存り方が、こうした女性就業率の高さを支えています。

しかしベトナムでは、女性に関してある課題が指摘されています。それは"低栄養"、つまり健康な体を維持するために必要な栄養素が足りない状態に陥っている女性が非常に多いのです。そして、その原因は経済的な理由ではなく、栄養の大切さが十分に理解されていないことにあります。

"栄養バランスの良い食事"がどんなものかを知っているベトナム人は少ないと思います。栄養に気を遣うことなく好きなものを食べている人が多いのです。

こう話すのは、メイジフードベトナムの栄養士、グエン・ティ・ビック・フォン。フォンは、ワーキングマザーが時間に追われていることや、安価な屋台料理を簡単に買えることが栄養バランスの乱れにつながっていると指摘します。「どのような食事が理想的なのか、料理方法とともに広めていきたいと考えています。」

そこで明治グループとして、栄養意識の向上と健康的な食習慣の普及を目指す新たなプロジェクトを始めました。

明治グループは2017年にベトナムの工場で働く女性を対象とした調査をしました。その調査で分かったのは、30%もの働く女性が栄養不足であること。また、ビタミンA不足が14.2%、さらには妊娠中の女性の36.5%が鉄欠乏性貧血だと分かりました。そこで、明治グループは、女性の低栄養が胎児や乳児の健康にも悪影響を及ぼす可能性に着目し、女性に向けた啓発に力を入れることを決断します。

こうしてメイジフードベトナムは2018年、工場で働く女性向けの栄養改善セミナーを開始しました。ハノイ医科大学と共同で、健康的な食生活や栄養バランスに関する基礎知識を提供するプログラムを開発し、フォンを中心とする栄養士が講師を務めています。また、鉄やカルシウム、亜鉛などの栄養素を含む、粉末の栄養強化ミルク「メイライフ(MEILIFE)」の提供も行っています。

写真:
「メイライフ(MEILIFE)」

セミナーは多くの参加者から好評いただいており、例えば、ある縫製工場で働いている方からは「自分の食生活をきちんと考えたことがなかったので、とても役に立ちました。『メイライフ(MEILIFE)』はすっきりとしていて飲みやすく、健康のためにしばらく飲み続けてみようと思います。」との声が届いています。

セミナーを監修するハノイ医科大学の栄養学博士グエン・トゥイ・リン氏は「ベトナム人女性の多くは食生活が偏っており、特に亜鉛は最大で60%も不足しています。この取り組みは女性従業員の栄養改善につながりますが、さらには労働生産性の向上につながる点でも大変有益だと考えています。」と話しています。

写真:セミナーの様子

セミナーの開催を経て、栄養士のフォンはこう言います。「私自身ベトナム人女性の一人として、この取り組みの意義を感じています。自分の健康は自分で守れるのだと、皆さんに知っていただきたいですね。それから、牛乳や乳製品を普段から取る女性は少ないので、『メイライフ(MEILIFE)』も飲んでもらえたらと思います。」

母子の栄養改善はベトナムの社会課題

明治グループは1968年からベトナムで粉ミルクを展開しています。ベトナムにおける粉ミルク市場は、国営企業のシェアが大きいため、meijiブランドのシェアは小さいものの、これまで事業は順調に成長を続けてきました。栄養改善セミナーを通じたベトナムの"健康"への貢献を、meijiブランドの認知向上につなげていきます。

メイジフードベトナムの髙井 淳社長は語ります。

母子の栄養改善はベトナムが国を挙げて取り組む社会課題。粉ミルクを長年販売してきた明治グループとしては、ぜひ解決に貢献したい分野です。

「栄養改善プログラムでは、2030年までに65万人の方に参加いただくことを目指しています。大切なのは地域の方のニーズに十分に応えること。ただ商品を売る企業ではなく、社会課題の解決に貢献できる"地域に根差した企業"でありたいと思います。」

働く女性向けのセミナーで栄養の基礎知識を

持続可能な開発目標(SDGs)では、17ある目標の1つとして「飢餓をゼロに」が掲げられ、思春期や妊娠・授乳期の女性の栄養問題がテーマになっています。ベトナムの事例が示すように、栄養失調は極度の貧困状態にある人たちだけに影響を与えるわけではありません。生活水準が急速に向上しても、必要な知識を得られなければ起こりうる問題なのです。

フォンは語ります。

セミナーの参加者から、栄養について学んだことで自分の健康に気を配れるようになったと聞くと、とてもうれしいです。このようなセミナーをもっとたくさん開催し、より多くのベトナム人女性の健康に貢献していきたいと思います。

写真:
メイジフードベトナムのメンバー
SDGs