ウェルネスサイエンスラボ
グループ内外のテクノロジーを結集、次世代のウェルネスを創造する。

イノベーションを導く技術開発

ウェルネスサイエンスラボ
2019年に食と薬のシナジー創出を目指して設立された「価値共創センター」は、2026ビジョンの「健康価値領域での新たな挑戦」、サステナビリティビジョンの「社会課題への貢献」を技術起点で実現することを使命とし、2023年に「ウェルネスサイエンスラボ」として生まれ変わりました。
ウェルネスサイエンスラボは、明治グループの主要な事業領域である「食」と「薬」を横断した技術開発の中核として、10年先を見据えて策定した「中長期技術開発戦略」の深耕や、グループが培ってきた多様な技術や知見を活かした新領域の開拓、技術シーズ起点の事業化検討に取組むなど、グループ全体のイノベーション基盤の構築を担っています。また、明治グループの強みであるマイクロバイオームや母子栄養などに関する研究・技術開発拠点として、グループの事業基盤を一層強化する機能も有しています。
食品事業+医薬品事業+オープンイノベーションで切り拓く新事業
新領域の開拓には、明治グループの食品事業と医薬品事業が持つ強みや技術資産に加え、外部のアイデアや技術を積極的に取り入れることが重要と考えます。このようなオープンイノベーションを加速し、より革新的で競争力のある事業創出に繋げていきます。
食品事業の強み | 栄養学の専門知識、ミルク・乳酸菌・カカオ等の素材研究、栄養工学技術など |
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医薬品事業の強み | 薬理学的専門知識、合成技術、微生物およびバイオ医薬品技術など |
技術資産 | 微生物制御技術、プロセス技術、評価技術 |
ウェルネスサイエンスラボでは、国内外の大学や公的研究機関との連携にくわえ、国内外のベンチャー・スタートアップ企業への出資や協業を積極的に進めています。これにより技術開発のスピードを高め、グループ全体の新たな独自技術基盤の創出に貢献しています。明治グループの既存の強みを活用しつつ、オープンイノベーションを通じて新たな強みを生み出すことで、グローバルに通じる新しい価値や事業の創出に挑戦していきます。

イノベーション創出のための技術開発戦略
10年先を見据えた技術開発の方向性として6領域の技術開発戦略を策定
明治グループは、10年先を見据えた技術開発の方向性を示すものとして技術開発戦略を策定しました。
グループスローガン「健康にアイデアを」の実現に向け、これまでに蓄積された技術資産を再評価し、重要な要素技術として「微生物制御」「プロセス技術」「評価技術」を特定しました。また、既存の枠組みにとらわれることなく、多様な社会課題に応じた技術開発を進めるために「プロダクトダイバーシティ(モノに対する価値観の多様化)」と「ライフダイバーシティ(人々の生活・人生観の多様化)」を基盤コンセプトとしました。これらの明治グループの重要要素技術の活用、外部環境の変化、達成したい目標などを総合的に考慮し、次の6領域を技術開発戦略として定めました。
ウェルネスサイエンスラボは、この技術開発戦略に基づいて技術開発テーマを設定し、新たな独自技術基盤の創出に取組み、その技術を事業創出にまでつなげることで、明治グループのさらなる成長を推進していきます。
技術開発戦略のコンセプトと領域
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持続可能な農業・酪農
環境負荷低減、GHG(温室効果ガス)排出量の削減、人権・人財の課題など、農業・酪農・畜産などの生産現場を取り巻くさまざまな課題をサイエンスで解決し、調達活動における持続可能性の追求と安定的な品質担保を実現していく技術開発領域。
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多様なものづくり
不確実性が高く、変化の早い環境下において、明治グループが培ってきた既存生産技術と最新技術を組み合わせ、高品質かつ、効率性と柔軟性を両立させた製造プロセスを設計する技術開発領域。
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多様な食糧をより身近に
生活者の価値観の変化に伴う「食の多様性」に適応するため、明治グループの培養技術、食材をおいしく加工する技術、栄養設計技術、評価技術などを活用し、次世代フード、サステナブル素材をもっとおいしく、利用しやすく、地球に優しく、身近にしていく技術開発領域。
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持続可能なサプライチェーンの基盤
フードロスの削減、持続可能なパッケージ開発、再生可能エネルギーの利用、アップサイクルへの転換、返品による廃棄の課題など、製造業に関わるさまざまな課題に対応するため、明治グループのサプライチェーン全体(調達・開発・製造・物流・販売など)の持続可能性を追求していく技術開発領域。
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ウェルネスライフサイエンス
生活者とその家族・パートナーの「体」「心」「ライフステージごとの生活充実」を基軸に「Wellness」をサイエンスで紐解き、食を中心に包括的に支えるCAREと、医薬品やワクチンを中心に医療の領域から支えるCUREをシームレスにつなげ、一歩先を行く健康価値を創造していく技術開発領域。
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消費者・社会・エコシステム構築の基盤
生活者のさまざまなデータ分析をもとに、当社の提供する健康価値をあらゆるユーザーや患者さんの行動変容や継続利用につなげていくためのインサイトを捉えるとともに、社会・エコシステムへのつながりをサイエンスで紐解く技術開発領域。
明治グループは、10年先を見据えた技術開発の方向性を示すものとして技術開発戦略を策定しました。
グループスローガン「健康にアイデアを」の実現に向け、これまでに蓄積された技術資産を再評価し、重要な要素技術として「微生物制御」「プロセス技術」「評価技術」を特定しました。また、既存の枠組みにとらわれることなく、多様な社会課題に応じた技術開発を進めるために「プロダクトダイバーシティ(モノに対する価値観の多様化)」と「ライフダイバーシティ(人々の生活・人生観の多様化)」を基盤コンセプトとしました。これらの明治グループの重要要素技術の活用、外部環境の変化、達成したい目標などを総合的に考慮し、次の6領域を技術開発戦略として定めました。
ウェルネスサイエンスラボは、この技術開発戦略に基づいて技術開発テーマを設定し、新たな独自技術基盤の創出に取組み、その技術を事業創出にまでつなげることで、明治グループのさらなる成長を推進していきます。

持続可能な農業・酪農
環境負荷低減、GHG(温室効果ガス)排出量の削減、人権・人財の課題など、農業・酪農・畜産などの生産現場を取り巻くさまざまな課題をサイエンスで解決し、調達活動における持続可能性の追求と安定的な品質担保を実現していく技術開発領域。
多様なものづくり
不確実性が高く、変化の早い環境下において、明治グループが培ってきた既存生産技術と最新技術を組み合わせ、高品質かつ、効率性と柔軟性を両立させた製造プロセスを設計する技術開発領域。
多様な食糧をより身近に
生活者の価値観の変化に伴う「食の多様性」に適応するため、明治グループの培養技術、食材をおいしく加工する技術、栄養設計技術、評価技術などを活用し、次世代フード、サステナブル素材をもっとおいしく、利用しやすく、地球に優しく、身近にしていく技術開発領域。
持続可能なサプライチェーンの基盤
フードロスの削減、持続可能なパッケージ開発、再生可能エネルギーの利用、アップサイクルへの転換、返品による廃棄の課題など、製造業に関わるさまざまな課題に対応するため、明治グループのサプライチェーン全体(調達・開発・製造・物流・販売など)の持続可能性を追求していく技術開発領域。
ウェルネスライフサイエンス
生活者とその家族・パートナーの「体」「心」「ライフステージごとの生活充実」を基軸に「Wellness」をサイエンスで紐解き、食を中心に包括的に支えるCAREと、医薬品やワクチンを中心に医療の領域から支えるCUREをシームレスにつなげ、一歩先を行く健康価値を創造していく技術開発領域。
消費者・社会・エコシステム構築の基盤
生活者のさまざまなデータ分析をもとに、当社の提供する健康価値をあらゆるユーザーや患者さんの行動変容や継続利用につなげていくためのインサイトを捉えるとともに、社会・エコシステムへのつながりをサイエンスで紐解く技術開発領域。
ウェルネスサイエンスラボの代表的な研究・技術開発事例
最先端の技術を活用し、食糧生産に革新を
「バイオものづくり」技術開発と事業化に向けた取り組み
近年、先端のバイオ技術とデジタル技術を活用し、微生物の力で物質を生産する「バイオものづくり」が世界的に注目されています。この技術は食品など有用物質の生産効率を大幅に向上させ、これまで困難であった成分などの工業生産も可能にします。これにより、食糧問題や環境問題の解決に貢献することが期待されています。
明治グループは、食品セグメントで乳酸菌をはじめとする6,000株以上の微生物株を、医薬品セグメントで放線菌や糸状菌など約8万株の微生物株を資産として保有しています。ウェルネスサイエンスラボでは、これらの微生物株を活用して「バイオものづくり」技術開発を推進しています。
また、国内外のスタートアップ企業や研究機関とのオープンイノベーションを通じて、人や家畜の健康課題を解決する高付加価値な食品素材などの創出と事業化を目指しています。

「細胞培養カカオ」の技術開発によるカカオ生産の持続可能性向上

明治グループの食品事業に不可欠なカカオ原料の調達に関する研究も進めています。カカオの生産は、児童労働や森林減少、温暖化による農地の減少、病害虫の影響による収穫量の減少、さらには価格の高騰といった多くの課題を抱えています。これらの課題解決に貢献するべく、明治グループはネイチャーポジティブの観点からさまざまな取り組みを行っています。
ウェルネスサイエンスラボでは、「細胞培養カカオ」に関する独自の技術を有する米国のスタートアップ企業であるCalifornia Cultured社との共創を通じて、テクノロジーを起点としたカカオ生産の持続可能性の向上に取り組んでいます。
サステナブルな酪農を実現するために
明治グループは、2023年8月に、酪農DXのリーディングカンパニーとして、技術開発や次世代酪農の実践に挑戦する株式会社ファームノートホールディングス(以下、ファームノート)と資本業務提携しました。
この提携により、同社の先進技術と明治グループの専門知識や資産を融合させ、サステナブルな酪農の推進を目指します。
2024年には、ファームノートが管理する牧場にて、子牛の健康に関する技術開発プロジェクトが始動しました。このプロジェクトは、ウェルネスサイエンスラボ、北海道大学、明治飼糧株式会社が共同で進めており、酪農家にとって大きな経済損失の要因となっている子牛期における下痢や呼吸器疾患の発生を抑えるための技術開発に取り組んでいます。プロジェクトでは、オープンイノベーションの枠組みを活用し、子牛が成長する過程での身体変化と健康状態を多角的に調査します。子牛の健康増進を図り、最終的にはサステナブルな酪農の実現に寄与する技術開発を進めています。
ファームノートの主な取り組み
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クラウド牛群管理システムや牛向けウェアラブルデバイスの供給
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乳牛の遺伝子情報解析による育種改良
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自社牧場での次世代酪農の実践(検証)
など

R-1 EPSによる免疫チェックポイント阻害薬の効果増強に関する研究
免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫細胞の攻撃を逃れるブレーキを解除し、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする治療薬として目されています。しかし、現在の免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は必ずしも高くありません。
最近の研究では、がん患者の腸内細菌やその代謝物が免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響を及ぼすことが示されています。ウェルネスサイエンスラボは、順天堂大学、東京大学、フランスのパスツール研究所などの研究機関からなる日仏豪の国際共同研究の成果として、明治グループが保有する乳酸菌OLL1073R-1株が生成する菌体外多糖(EPS)が、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を高める可能性を明らかにし、そのメカニズムを解明しました。
この研究成果は、米国がん学会誌のトップジャーナルであるCancer Discovery誌に報告されています※1。
参考:
※1Hirotaka Kawanabe-Matsuda, et al. Dietary Lactobacillus-Derived Exopolysaccharide Enhances Immune-Checkpoint Blockade Therapy. Cancer Discovery12 (5): 1336–1355 (2022)
動物実験における倫理的配慮
明治ホールディングス株式会社は、ウェルネスサイエンスラボで実施する研究活動、ならびにウェルネスサイエンスラボが外部機関と連携して実施する研究活動における動物実験に関して、「動物実験の実施可否に関する倫理指針」を制定し、動物実験を実施する絶対的必要性を評価する厳格な社内プロセスを経て実施可否を判断することを定めています。
動物実験の実施にあたっては、「動物の愛護及び管理に関する法律」および「3Rの原則」(Reduction:動物数の削減、Replacement:代替法の利用、Refinement:苦痛の軽減)を基本とする各省庁が規定する諸規則や、ウェルネスサイエンスラボが定める「動物実験等倫理規程」を遵守し、動物実験委員会による審査を行ったうえで適正に実験を行っています。
さらに、動物実験の実施状況等を定期的に自己点検・評価し、動物実験が適正に実施されていることを確認するとともに、上記の取り組みについて第三者(一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC))による認証を取得しています。