顔写真:土師智寿

土師 智寿

株式会社 明治
イノベーション事業戦略部 事業運営G

顔写真:野間口達洋

野間口 達洋

株式会社メタジェン
商品開発支援事業部
博士(理学)

近年の研究で、腸が体全体の健康に大きく関係することが明らかになってきています。
腸内環境を整える「腸活」がブームになる中、明治グループは、もう一歩踏み込んで人々の健康づくりをサポートしようと、それぞれの腸内タイプに合わせたパーソナルケアを企画。開発に3年をかけて完成させたのが「インナーガーデン」です。
一人一人の腸内細菌を検査し、その結果に応じて飲料と生活習慣アドバイスを提供するこのサービスについて、プロジェクト担当の土師と、サービスの開発支援・監修を行う株式会社メタジェンの野間口氏に話を聞きました。

腸内細菌ごとに好きな食べ物が違う!?

腸内環境は、さまざまな生活習慣によって変わります。
中でも大きく影響するのが食事で、腸活といえば、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を食べたり、乳酸菌やビフィズス菌のサプリメントを摂取したりすることがよく知られています。

一方、近年の研究では、腸内環境からより良い健康効果を得るためには、個々人の腸内細菌を調べそれに合わせてアプローチすることが重要であるとされています。私たちの腸内には約1,000種類の腸内細菌が存在し、その構成は個人によって大きく違います。その上、腸内細菌ごとに好む栄養源が異なり、腸内細菌が好みの栄養源を摂取した時に産生する「短鎖脂肪酸」(たんさしぼうさん)がさまざまな健康に関与していることが明らかになってきたからです。

自分の腸内細菌を知り、その菌が好む栄養源を取ることで、より効率的に腸内細菌を元気にする──。
そうしたコンセプトを基に、3年がかりで開発したのが「インナーガーデン」です。

このサービス名の由来について、土師は次のように話します。

写真:インナーガーデンについて語る土師

「菌は腸内で密集して存在していて、その様子がまるでお花畑(フローラ)のようにも見えることから、腸内細菌の集団を腸内フローラと呼びます。この腸内フローラにちなみ、一人一人の体の中にある庭に栄養を与え、元気に育てていくという思いを込めて、『インナーガーデン』と名付けました」

「インナーガーデン」が提案するのは、もともと自分のおなかにいる菌を元気に育てていくという、新たな健康習慣です。(土師)

エースの菌に活躍してもらうことが効率的

「インナーガーデン」は、腸内フローラ検査と飲料がセットになった新たな形態のサービスです。検査で、腸内細菌の代表的な5菌属の量とバランスを測定し、腸内タイプを判別。そして、目立って多い菌が好む栄養源を配合したココア飲料を、全5品のラインアップの中から選定して提供し、継続的に飲んでもらうことで健康づくりをサポートします。

土師は、開発において3つのことを重視したと言います。

1つ目は、「エビデンス」です。これまでに蓄積してきた腸内細菌の知見や食品開発の技術を活用しながら、より科学的なデータに基づいた商品にするために、メタジェンと協業しました。

「メタジェンさんは、腸内環境研究に特化した大学発のスタートアップ企業。基礎研究の面で私たちにはない専門的な知見があるので、開発の初期段階から密にやりとりして一緒に商品を作っていきました。強力なパートナーです」

腸内環境にしっかりアプローチするために着目したのが「短鎖脂肪酸」です。短鎖脂肪酸は、腸内細菌が水溶性食物繊維やオリゴ糖などの栄養源を分解して作る代謝物質の一つ。腸内環境を整えるカギで、全身の健康維持にも重要であることが分かっています。
メタジェンの野間口氏は次のように話します。

写真:インナーガーデンについて語る野間口氏

「短鎖脂肪酸をたくさん作り出すには、腸内細菌に元気に活動してもらう必要があります。ただ、腸内細菌ごとに好む栄養源はさまざま。腸内にいる少ない菌を元気にするよりも、多い菌を元気にするほうが、効率的に短鎖脂肪酸を生み出すことができます。そこで、個々人の腸内環境の中でどの菌が多いのか測定し、そのエースの菌にしっかり栄養源を与えて活躍してもらうという考えで、商品を作り込んでいきました」

それぞれの菌が一番好む栄養源は何か、その菌にとって最適な量はどのくらいか。データを基に何度も検討と試作を重ねました。(野間口)

科学的な情報を、いかに分かりやすく伝えるか

開発で重視したことの2つ目は、「分かりやすさ」です。誰でもひと目で腸内環境を理解できるよう、5つのカテゴリーを独自に考案したのはそのためです。
腸内フローラ検査は、バクテロイデス、ルミノコッカス、フィーカリバクテリウム、プレボテラ、ビフィドバクテリウムという、日本人のおなかの中で短鎖脂肪酸を作る代表的な5菌属に対象を絞って実施。例えば、検査で5菌属のうちバクテロイデスが目立って多ければ、腸内タイプの結果は「バクテロイデスタイプ」となり、バクテロイデスが好むシクロデキストリンというオリゴ糖の一種を配合した飲料が届く形です。

「腸内細菌の種類はとても多いため、あえて主要な5菌属に絞ることで、ユーザーの方にとって自分の腸内タイプが理解しやすく、また検査費用を抑えて、サービスが試しやすくなるようにしました。科学的なデータを重視しつつ、それをいかに分かりやすく伝えるか。商品設計する上で、とてもこだわった部分です」(土師)

「インナーガーデン」の腸内フローラ検査キットとココア飲料
「インナーガーデン」の腸内フローラ検査キットとココア飲料
検査結果と生活習慣アドバイスのイメージ
検査後、腸内タイプの結果とともに、5菌属の量とバランス、生活習慣のアドバイスなどが届きます

おいしいからこそ、健康習慣として続けられる

開発で重視したことの3つ目は、「おいしさ」です。ユーザーに健康習慣として続けてもらうためには、おいしさが不可欠。さまざまな形態や味を検討しました。

毎日気軽に摂取できる点で飲料に絞り込み、さまざまな水溶性食物繊維やオリゴ糖を配合しても安定したおいしさを実現できるココア飲料を採用。「ヨーグルトなども候補に挙がったのですが、事前調査でユーザーの方にどんな商品で続けたいかを聞いたところ、普段摂取しているヨーグルトよりも、自分専用の特別なドリンクが良いという意見が多かったことが決め手になりました」と土師は話します。

ココア飲料のラインアップ(全5種類)
ココア飲料は全5種類のラインアップ。それぞれ代表的な5菌属が好む栄養源を配合しています

「そのまま飲んでももちろんおいしいですし、牛乳を混ぜたり、夏は氷を入れて、冬はホットにしても楽しめます。ユーザーの方からは『おいしいので、毎日楽しく続けられる』といった声を多くいただいています。また、日頃から発酵食品や食物繊維を多く食べるなど、すでに腸活を実践している方にも『ココア飲料なら、新たな腸活メニューとして食生活にプラスしやすい』と好評なんですよ」(土師)

新たな腸活を広め、広く健康をサポート

「インナーガーデン」はまだスタートしたばかり。現在もサービスのブラッシュアップが進行中です。

「腸内環境の研究は近年、急速に進んでいます。日々アップデートされる知見を反映しながら、『インナーガーデン』の進化をサポートしていきます」と、野間口氏は意気込みを語ります。

「私たちメタジェンは、個々の腸内環境に合ったヘルスケアの普及をミッションにしています。『インナーガーデン』のコンセプトとも合致しているので、協業は私たちにとっても大きな意義があります。自分の腸内細菌を知って元気に育てていくという最新の健康づくりを、一人でも多くの方に知ってもらえたらと思います」

土師は、「インナーガーデン」で腸内環境の市場を盛り上げることも、自分たちの使命だと語ります。
「腸内検査がセットになった商品という今までにないサービスを展開していく上で、meijiというブランドは大きな強み。多くのユーザーの皆さんに信頼感や安心感をもって試していただけます」

市場をけん引していく気持ちで、腸内環境のパーソナルケアを広め、より多くの人々の健康に寄与していきたいと思います。(土師)

写真:野間口氏、土師、2人の写真