藤本 和英Kazuhide Fujimoto
株式会社 明治
経営企画本部 イノベーション事業戦略部
小森 素晴Motoharu Komori
株式会社 明治
経営企画本部 イノベーション事業戦略部
桑畑 遼Ryo Kuwahata
株式会社 明治
価値創造戦略本部 戦略推進部 戦略企画G
兼 経営企画本部 イノベーション事業戦略部 事業開発G
原田 悠暉Yuki Harada
株式会社 明治
経営企画本部 イノベーション事業戦略部
イノベーティブな事業の立ち上げと人財育成を目指す明治の社内創発プログラム「mBD」。ここから、「できたての乳製品の魅力を伝える」というコンセプトのブランドが誕生しました。部署や経験が異なるメンバーが強みを活かし合って成立したこのプロジェクトの道のりを紹介します。
社内創発プログラム「mBD」から初めての事業が誕生
「mBD」は、社内公募メンバーが主体となり新規事業創出を目指すプログラムです。多様な人財がイノベーションや新規事業に関するアイデアを発想し、事業構想化して、実際に事業を立ち上げることを目標としています。年齢も出身部署も関係なく参画できることに魅力を感じ、毎年多くの社員が手を挙げています。
「mBD」(meiji Business Development)とは
社内公募メンバーにより課題解決型の事業創出を目指すプログラム。デザインシンキングと事業開発メソッドを活用し、多様な人財がイノベーションや新規事業に関するアイデアを創発・事業構想化して、実際に事業を立ち上げることを目標として、2021年から実施されている。
今回、「mBD」から初めて事業化に至った「できたて乳製品」は、営業・マーケティング出身の藤本、研究・技術出身の小森、人事出身の桑畑の3人が立ち上げたプロジェクト。
2021年にアイデア出しからスタートし、新事業の構想を膨らませるフェーズでは実に100以上の案を出していきました。そこから、顧客や社会の課題解決につながるか、事業として実現・継続が可能であるかといった観点で絞り込み、社内外のさまざまな意見を聴取しながらアイデアを練り、社長プレゼンを経て事業化の承認がなされました。
以降、3年にわたって事業化の準備を進め、ついに2024年5月、新ブランド「FRESH CHEESE STUDIO」のリリースイベントを開催するに至りました。
「できたて乳製品」とは?
プロジェクトが目指すのは、「できたて」の乳製品の持つ魅力を多くの方に感じていただくこと。まずは、「できたて」の良さが伝わりやすいフレッシュチーズに着目して事業を進めています。全国どこでも「できたて」のおいしさを提供するために、チーズの一歩手前の状態である「カード(凝乳)」を国内の生乳産地で製造し、それを材料として全国の飲食店や自社拠点などで新鮮なフレッシュチーズに仕上げて 提供するというビジネスモデルを開発しました。独自製法のカードは海外製のものよりも高品質で乳本来の風味も豊かなうえ、カードの状態で冷凍長期保存ができるため、ユーザーの好きなタイミングで必要な量だけ仕上げることが可能です。
また、フレッシュチーズの生産・販売には、一般的に大きな窯や温度管理装置、カッターなどの各種設備が必要でした。しかし、「FRESH CHEESE STUDIO」のカードは、小規模な店舗でも電子レンジさえあればフレッシュチーズを作ることができるため、設備のコストや手間を省くこともできます。
プロジェクトメンバーそれぞれの思いを結集
フレッシュチーズへの着目は、このプロジェクトで商品開発を担当する小森がイタリアを訪れた際、できたてのモッツァレラチーズのおいしさに感動したことが発端となっています。
「でもイタリアのチーズはちょっと酸味が強いんです。日本人好みのミルク感あふれるフレッシュチーズを作れるカードを実現するために何度も試作を繰り返しました。」
人事という畑違いの部門から参加した桑畑は、「メーカーにいるからには、製品の開発や生産、販売に携わってみたかったんです」と、「mBD」への参加動機を語ります。「とはいえプロジェクトには、それぞれの専門家がいます。ですから皆さんの手が回らなかったり、こぼれたりしたタスクをどんどん拾っていきました。プロジェクトを成功させたいという情熱はみんなに負けてないと自負しています。」
また、できたてのチーズを届けるアイデアと並行し、チームでは「酪農家への貢献」という観点も大事にしていました。桑畑は議論の様子をこう振り返ります。「社会課題を解決するという観点からアイデア出しをしているときに、酪農家の経営の助けになる事業ができないかという議論になりました。」
「できたて」と「乳製品」というアイデアを掛け合わせ、すごくおいしくて魅力的な乳製品を提供できれば、国産生乳の価値をもっともっと高められるのではないかと考えています。
また、2024年には、事業化を加速させるために、製造現場での品質管理や食品安全マネジメントを行ってきた原田がプロジェクトに参加。品質を保証しつつ、安全性を担保できる製造方法や仕組みを試行錯誤してきました。「事業化が決定して以降は、できたてのチーズをお客さまに届けられることに魅力を感じ、ぜひ自分の知見を活かしたいと感じました」と原田は語ります。
アレンジや創作の意欲をかき立てる
現在、プロジェクトは製品の開発フェーズから、販売・マーケティングの段階に移っています。イタリアンレストランからフレンチ、和食の老舗まで、多種多様な飲食店に赴き商談を行っています。桑畑は、単なるプレゼンで終わらせず、熱量を持って伝えている、と言います。
「普通の商談では、プレゼン資料や商品サンプルを見せながら口頭で伝えるのが一般的です。でもそれだけでは伝わり切らないと思い、私たちはカードを持っていって、商談の場で先方の電子レンジをお借りし、実際にその場でフレッシュチーズを作って食べてもらっています。商談中に目の前でチーズを作り始めるような会社はまずないでしょうし、商品自体のおいしさのみならず、できたてが食べられるという期待感や臨場感を強く印象づけられていると思います。」
レストランの厨房にある電子レンジを使ってフレッシュチーズを作れる手軽さにより、料理人によるアレンジや創作の可能性も広がることも強みのひとつです。
「それぞれの調理場で形やサイズ、柔らかさなど自在に調整できるため、商談の場でも、お客さまとのディスカッションにより、さまざまな提供方法のアイデアが生まれました。飲食のプロの方々の創作意欲をかき立てる商品だと思います。」
食材との相性と品質を活かせば地域活性や海外進出も可能に
2024年夏には、期間限定で軽井沢のゲストハウスや店舗スペースで、「FRESH CHEESE STUDIO」ブランドを掲げた販売イベントを実施。今年の秋には都内での本格展開を予定しています。
さらに、最終加工をレストランで行い、調理して提供する形など、複数の事業展開を構想。藤本は今後の展開について次のように話します。
「ミルクのおいしさを“できたて”という新しい体験として提供していくことで、そこに驚きやワクワク感を生み出し、あらためて乳製品がもつ魅力に多くの方に気付いていただきたいと思っています。乳製品はやさしく包容力がある素材です。日本には地域ごとに魅力的な食材やシェフなど料理に携わる方々の素晴らしい技術が数多く存在します。「FRESH CHEESE STUDIO」がその魅力を発信し、皆さんと交流する場となることで、地域活性にもつながると考えています。」
まずは地域に愛されるブランドとして、そして日本の魅力を発信していくブランドとして、さらに将来的には海外に展開し日本の魅力を世界に伝えていきたいです。
「FRESH CHEESE STUDIO」ブランドはまだ始まったばかり。このフレッシュな事業の今後にご期待ください。
FRESH CHEESE STUDIO