食品事業

食品事業は、技術(特許と特許以外の技術ノウハウ)とブランド(商標)がほぼ同等の価値を有し、
それぞれ相互に関連しながら事業活動を支援するという、特徴ある知財モデルを備えています。

食品事業の知財マネジメントプロセス

技術(特許と特許以外の技術ノウハウ)とブランド(商標)とをインプットとして、さまざまな事業が創造されます。これら事業を継続していくことにより、経済的および社会的なアウトカムが生み出されます。経済的アウトカムは、研究開発へ再投資され新たなインプット技術を積み上げる一方、社会的アウトカムは、ブランド価値、さらには企業価値を高めます。

イラスト:食品事業の知財マネジメントプロセスの図。技術とブランド(商標)をインプットとして、さまざまな事業を創造することで、経済的・社会的アウトカムを生み出していることを表しています。

● 各事業のビジネスモデル

戦略的な特許取得

特許を戦略的に取得して、研究開発の成果を無形資産として継続的に蓄積しています。(株)パテント・リザルトが提供するパテントスコア®を用いて比較した結果、下図に示す通り、主要カテゴリーで競合企業に対して、質・量とも価値の高い特許を保有し、総合力で優位を示しています。今後もこの優位性を維持・向上させ事業の持続的成長に貢献します。

主要カテゴリーごとの特許競争力

イラスト:株式会社パテント・リザルトが提供するパテントスコア®を元にした特許競争力を示したイラスト。他社と比較して株式会社明治の優位性が高いことをを示しています。

主要カテゴリーは(株)明治独自の分類

● 代表的な特許事例

  • らくらくキューブ(固形乳)
    (特許第4062357号)

    粉ミルクの利便性を飛躍的に高め、より快適な育児生活に貢献することを目的に、固形化粉ミルクの開発に取り組み、従来困難とされていたキューブ製法技術を確立しました。
    この「固形乳、及びその製造方法(特許第4062357号)」は、令和4年度関東地方発明表彰「日本弁理士会会長賞」を受賞しています。

      • 明治ほほえみらくらくキューブ
  • ナチュラルテイスト製法
    (特許第5008081号、特許第5259850号)

    「明治おいしい牛乳」シリーズは、生乳を工場に受入れた直後と、酸化が特に進む加熱殺菌前に酸素を追い出すナチュラルテイスト製法で風味変化を抑えています。この製法により、「生乳本来の自然でさわやかな香り、ほのかな甘み、まろやかなコクはそのままにすっきりしたあと味」を味わうことができます。

      • 明治おいしい牛乳900ml
  • あじわいこだわり製法
    (特許第4079440号)

    生乳を細かい穴を通してろ過することで(乳成分の選択濃縮技術)、生乳のおいしさをギュッと濃縮することに成功しました。また、生クリームの製造工程に新しい工程(脱酸素工程)を組み込むことで、酸化による風味の劣化を防いでいます。

      • 明治フレッシュクリームあじわい40
  • 速攻吸収製法
    (特許第6895257号)

    ミルクプロテインは牛乳などの中性飲料で摂取した場合、胃内で凝固し、その後、分解され吸収されます。酸性域でミルクプロテインを安定化させることで、凝固せず、吸収が速いことが証明されています。

      • ザバスMILK PROTEIN

技術ノウハウの管理

明治グループは、素材、評価、加工の領域で、長年にわたって技術基盤を蓄積してきました。この基盤をもとに、世界トップレベルの優れた技術ノウハウを生み、meijiならではの価値創造につなげています。例えば、摂食動作研究において、自社開発の4次元嚥下えんげシミュレータ「Swallow Vision®」を用いて誤嚥ごえんリスクなどを評価し、年齢や機能に応じた食品の開発につなげています。今後も研究開発や品質管理などにより、技術ノウハウを積み上げていきます。

主要な技術ノウハウ

素材 素材加工 酵素処理
素材発酵 発酵
素材剤型加工 油脂
評価 分析 オミクス関連技術
香気分析
評価 細胞アッセイ
生体計測
摂食動作
加工 配合設計 栄養素配合
物性制御
香料
乳化安定
殺菌安定
酵素処理
原料選定
調合・殺菌 殺菌
均質化
攪拌・混合
充填・包装 無菌充填
保存性
微生物 発酵

FOCUS

4次元嚥下えんげシミュレータ「Swallow Vision®」を活用し、
事故予防のための行政の取り組みに参画

  • 子どもが食事中に窒息や誤嚥ごえんを起こす事故が問題となっています。消費者庁消費安全課では、動画や画像によって保護者や教育・保育従事者に分かりやすく注意喚起をすることにしました。当社と武蔵野赤十字病院は、消費者庁より嚥下シミュレータを使用した子どもの気道閉塞へいそくシミュレーションおよびイメージ動画の制作業務を共同受託しました。同嚥下シミュレータは、当社と武蔵野赤十字病院が共同開発した世界初の4次元嚥下コンピュータシミュレーションシステムで、通常見ることができない飲み込む時の身体の動きや食品の流れが見られるほか、仮想的なシミュレーションもできます。これを基に窒息や誤嚥のメカニズムを明らかにするとともに、リアリティのある動画と画像を制作しました。

  • 写真:えんげシミュレーションのイメージ

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"meijiらしい"商標の活用

明治グループは、多様な商標権を取得し、商標を通じて商品の価値や魅力を伝えています。また、近年では他社とコラボレーションするなど従来の商標活動とは異なるアプローチでブランド価値を高めているほか、社会貢献コンセプトの商標権も取得し、サステナビリティ活動を支えています。

商品ライフ長期化を実現させる「特許・技術ノウハウ」と「商標」の関係

明治グループの主要商品は、商品ライフサイクルの成長期から成熟期が非常に長期に及ぶことが特徴です。そのため特許の存続期間が満了してもブランドとして市場で十分に認知され、商標に新たな価値が上乗せされることで顧客誘引力を保ち続けます。こうして、特許と技術ノウハウによる参入障壁と、商標による顧客誘引の知的財産価値とを相互に関連させながら、長期的に事業を支援しています。

● 技術先行型

基礎研究の成果としての特許を取得したのち新規製品を販売。特許満了後も価値が拡大した製品ブランド商標によって事業を永続的に行うモデル

例)「明治プロビオヨーグルトR-1」

  • イラスト:明治プロビオヨーグルトR-1の商品ライフサイクル。導入期、成長期、成熟期では売上が上昇し、その後の衰退期では売上が下降することを表している。
  • イラスト:明治プロビオヨーグルトR-1の顧客視点からみた商標ブランド価値拡大のイメージ。時間の経過とともに顧客誘引力が拡大する様子を表している。
  • イラスト:明治プロビオヨーグルトR-1の技術ノウハウ側面から見た参入障壁拡大のイメージ。特許期間が満了したのち、参入障壁が高くなる様子を表している。

● ブランド先行型

強力な製品ブランド商標のもとで新規製品を販売。継続的に商品化技術/製法技術を開発し、特許化することで事業を永続的に行うモデル

例)「明治ブルガリアヨーグルトLB81」

  • イラスト:明治ブルガリアヨーグルトLB81の商品ライフサイクル。導入期、成長期、成熟期では売上が上昇し、その後の衰退期では売上が下降することを表している。
  • イラスト:明治ブルガリアヨーグルトLB81の顧客視点からみた商標ブランド価値拡大のイメージ。強力な製品ブランドのもと、顧客誘引力を一定に保つ様子を表している。
  • イラスト:明治ブルガリアヨーグルトLB81の技術ノウハウ側面から見た参入障壁拡大のイメージ。特許期間満了後も、参入障壁に変化がないことを表している。

多様な商標の保有・活用

  • 文字・図形・立体商標などを取得し、商品の価値を訴求しています。また、約90カ国でハウスマーク商標「meiji」「明治」を維持・保全し、消費者の安全・安心への信頼を獲得しています。「きのこの山」「たけのこの里」は、形状のみで立体商標として登録されました。ロゴや文字の無い商品そのものの形での登録例は少なく、多くのメディアやSNSで話題となりました。

  • 写真:きのこの山、たけのこの里の立体商標

立体商標登録がもたらす効果

商標の価値は、段階的に企業への評価にもつながります。

イラスト:立体商標登録がもたらす効果。商品への評価が上がることで、K業への評価も上がることを表している。

企業への評価

  • Level4  企業の評価
    有名ブランドを持っている企業(+知財で守っている企業)

商品への評価

  • Level3 評価の認定
    第三者(特許庁)からの周知著名性の認定
  • Level2 お客さまからの評価
    「顔」(商標)を見ただけで、何の商品か分かる(周知著名性)
  • Level1 ブランド価値の維持・向上
    商品ブランドを守りながら、信用の維持・蓄積により、ブランド力を向上

新たな価値の提供

「きのこの山」「たけのこの里」の立体商標登録がメディアで話題となったほか、ロングセラー商品「アーモンドチョコレート」の復刻版パッケージが消費者に喜ばれるなど、従来の商標価値とは異なる新たな価値を提供しています。

イラスト:製品ブランドの価値が拡大することで、ハウスマーク商標を含む企業価値が拡大することを表している。
  • コラボレーションによるブランド価値の向上

    「明治ミルクチョコレート」発売95周年を記念して、株式会社ラフォーレ原宿とコラボレーションしました。明治ブランドと先方のブランドイメージが相互に共鳴し、新たな世界観を創出しました。

  • 写真:
    写真:

    キャンペーンビジュアル・カタログ表紙

  • 回顧性

    「浅草花やしき」にて、「アーモンドチョコレート」など8種類の復刻版パッケージを使用したコラボレーションイベントを実施し、レトロ×レトロが生み出す懐かしくてかわいい世界観を表現しました。

    詳細はこちら
  • 写真:浅草花やしきとのコラボレーションイベント
    写真:浅草花やしきとのコラボレーションイベント

サステナビリティ活動への展開

カカオ農家を取り巻く環境の改善運動や、十勝地域の振興、災害備蓄など、会社を挙げて取り組んでいるサステナビリティ活動を商標化するとともに、ハウスマーク商標、製品ブランド、社会貢献活動を一体化させて企業価値の向上につなげています。

イラスト:ハウスマークの価値に社会貢献マークの価値を上乗せすることで企業価値が拡大することを表している。

カカオ関連

    • メイジカカオサポート
      ガーナ、ブラジル、ベトナムなどのカカオ農家がおかれた環境の改善に関連する商品を商標で保護しています。
    • 森をつくるカカオ
      アグロフォレストリー農法(農業と林業の組み合わせによるサステナブルな農法)で生産されたカカオ豆の製品/使用を商標で保護しています。
  • 写真:アグロフォレストリーミルクチョコレート

十勝地域振興

  • 北海道の十勝工場で製造するチーズ、ヨーグルトなどの商品に「明治北海道十勝」の商標を使用しています。十勝地域が育んだ生乳や乳製品の価値をお客さまに分かりやすく伝え、地域の振興にも貢献しています。このロゴは十勝の豊かな自然や大地を表現しています。

  • 写真:明治北海道十勝の商標

災害備蓄

  • 災害時の備蓄用として多くの自治体が採用している乳児用液体ミルクに信用を付与すべく商標で保護しています。

  • 写真:乳児用液体ミルク 明治ほほえみ

FOCUS

知的財産権制度活用優良企業として「知財功労賞」(特許庁長官表彰)を受賞

  • 明治グループは、商標を通じて商品の価値や魅力を伝えているほか、近年では他社とのコラボレーションなど従来の商標とは異なるアプローチでのブランド価値の向上、社会貢献コンセプトの商標権の取得などをしています。こうした特徴的な商標活動が認められ、2022年度に知的財産権制度活用優良企業として「知財功労賞」(特許庁長官表彰)を受賞しました。

    受賞のポイント

    • 商標を通じて、安心・信用といった商品価値をアピール
    • 「きのこの山」「たけのこの里」立体商標登録のような、消費者の共感を得る、新たなブランド価値の提供
    • サステナビリティ活動と商標を連携させた、社会貢献活動
  • ロゴ:知財功労賞