水資源
貢献するSDGs


明治グループサステナビリティ2026ビジョン
活動ドメイン
サステナビリティ活動KPI | 基準年 | 実績 | 達成目標 | |||
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2021 年度 |
2022 年度 |
2023 年度 |
2030 年度 |
2050 年度 |
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2030 年度までに自社拠点での水使用量の売上高原単位を2020 年度比15% 以上削減を目指す [ 明治G 連結 ] | 2020年度 | 6.4% | 13.4% | ー | 15%以上 | 半減 |
2030 年度までに製品原料として使用する水の涵養率45% 以上 [ 明治G 連結 ] | ー | 24.2% | 41.3% | 27%以上 | 45%以上 | ウォーターニュートラル |
水資源に対する考え方
人口増加や経済成長に伴う生活水準の向上により、世界の水需要は今後さらに増加し、水が不足するエリアの拡大が予測されています。明治グループの事業活動においても、水は欠かすことができない大切な資源です。
そのため明治グループでは「水資源の確保」を重要な社会課題の一つと認識し、明治グループ全体の水資源管理計画を策定した上で、水の効率的な利用や適正な排水管理などによって環境負荷低減に取り組むとともに、国内外の各事業所の水リスク評価を実施しています。
また、従業員やステークホルダーと共に、森林保全や水源涵養事業を通して水をはぐくむ活動にも取り組んでいます。
水資源の確保
水リスク調査結果
水リスクについては、事業継続への影響を把握するため、Aqueductなどを活用し、国内外の生産系拠点、研究所の水リスクを調査するとともに、現地へのヒアリングを進めています。Aqueductとは世界資源研究所(WRI:World Resources Institute)が公開する世界の水リスクを緯度・経度から評価するツールです。
Aqueductによる結果と、国内外の生産系事業所の水使用量や水質、生産品目の状況から高リスク拠点を抽出しました。なお、水資源のリスクが相対的に高い地域での水消費量※は、最新のデータでは全体の約3%となりました(2021年度実績)。今後、対策すべき優先順位を明確にした上で、対策のスケジュールを立案して計画的に実行に移していきます。
※Aqueductを活用し、水資源のひっ迫度(Baseline Water Stress(水ストレスリスク)及びBaseline Water Depletion(水枯渇リスク))と水資源の季節変動性(Seasonal Variability(季節変動リスク))の二つの視点で調査。現在および将来のリスク結果が高い地域を水資源のリスクが高い地域と定義
渇水リスク | 洪水リスク | 水質リスク | ||
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全体 | 15%(11/73) | 55%(40/73) | 16%(12/73) | |
日本(52) | 0%(0/52) | 58%(30/52) | 0%(0/52) | |
中国(5) | 20%(1/5) | 80%(4/5) | 60%(3/5) | |
アジア(中国を除く)(13) | 62%(8/13) | 31%(4/13) | 69%(9/13) | |
北米・欧州(3) | 67%(2/3) | 67%(2/3) | 0%(0/3) |
※日本、米国の洪水リスクの結果には、ハザードマップの情報を加えています。
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Aqueduct結果のギャップ分析
Aqueductの調査結果に加え、国内外の全生産系拠点にアンケート調査を実施しました。アンケート結果から、水資源を巡る紛争が無かったことを確認しています。今後も水リスクに対し、さらに詳細な優先順位を設定し取り組みを進めていきます。
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サプライヤーに対しての水リスクを調査
2021年には主要20サプライヤーにアンケート調査を行い水リスクに関する評価を実施しました。今後はリスク回避に向けて、サプライヤーとエンゲージメントを進めていきます。
水使用量実績
単位 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
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合計(グローバル) | 千m3 | 23,483 | 23,397 | 22,571 | 21,255 | 20,629 | |
原単位(グローバル) | 千m3/億円 | 1.87 | 1.87 | 1.89 | 1.78 | 1.94 | |
日本 | 千m3 | 22,056 | 21,979 | 21,189 | 19,808 | 19,516 | |
原単位(日本) | 千m3/億円 | 1.89 | 1.89 | 1.92 | 1.83 | 2.07 |
※国内データは国内明治グループ、原単位は国内売上高から算出。グローバルデータは明治グループ(国内明治グループおよび海外生産系12工場、2018年度実績よりKMバイオロジクス(株)を含む)2022年度の原単位は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用後の売上高から算出
単位 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
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合計(グローバル) | 千m3 | 23,397 | 22,571 | 21,255 | 20,629 | |
% | 100 | 100 | 100 | 100 | ||
上水 | 千m3 | 2,619 | 2,391 | 2,259 | 1,851 | |
% | 11 | 11 | 11 | 9 | ||
工業用水 | 千m3 | 5,329 | 4,888 | 4,680 | 4,505 | |
% | 23 | 22 | 22 | 22 | ||
河川・湖沼 | 千m3 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
% | 0 | 0 | 0 | 0 | ||
地下水 | 千m3 | 15,446 | 15,289 | 14,313 | 14,270 | |
% | 66 | 67 | 67 | 69 | ||
雨水 | 千m3 | 3 | 3 | 3 | 3 | |
% | 0 | 0 | 0 | 0 |
※海外を含む明治グループ
単位 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
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合計(グローバル) | 千m3 | 20,586 | 19,437 | 18,225 | 17,397 | 17,408 | |
日本 | 千m3 | 19,702 | 18,415 | 17,248 | 16,450 | 16,732 |
※国内データは国内明治グループ。グローバルデータは明治グループ
(国内明治グループおよび海外生産系12工場、2018年度実績よりKMバイオロジクス(株)を含む)
単位 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | ||
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排水合計 | 千m3 | 19,437 | 18,225 | 17,397 | 17,408 | |
% | 100 | 100 | 100 | 100 | ||
下水道 | 千m3 | 8,729 | 8,156 | 7,979 | 7,483 | |
% | 45 | 45 | 46 | 43 | ||
河川放流 | 千m3 | 10,614 | 9,991 | 9,324 | 9,845 | |
% | 55 | 55 | 54 | 57 | ||
海域 | 千m3 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
% | 0 | 0 | 0 | 0 | ||
地下水(散水含む) | 千m3 | 94 | 78 | 94 | 80 | |
% | 0 | 0 | 1 | 0 |
※海外を含む明治グループ
水資源の確保に向けた具体的な取り組み
明治グループでは、水資源の確保という社会課題の解決に向けて、国内外の生産拠点の水リスクを調査しました。その調査結果を受けて、具体的な取り組みを進めています。渇水リスク地域では、水の効率的な使用に努め、節水に配慮した設備の導入を進めることで水使用量削減対策を強化します。水質リスク地域では、取水・排水に関する水質の自社基準を策定し、モニタリングを強化します。洪水リスク拠点では、ソフト面、ハード面の両面から対策を講じます。
ソフト面では洪水リスクを考慮したBCPの策定を進め、ハード面では、リスク発生による想定被害額を算出し、被害額が大きいと思われる拠点から順次必要な施策を行っています。
節水に配慮した設備導入等による水使用量の削減
明治グループでは水リスクが高い地区を含め全てのエリアにおいて水使用効率を向上させる取り組みを実施しています。2022年度の実績としてグループ全体での水使用の総量を2.1%削減しています。 (2017年度対比)。具体的な取り組みとして、稼働時間外の通水停止、排水放流時の希釈水量の調整、漏水箇所の調査・修正対応を行っています。その結果、水使用の効率性(売上高原単位)は年々改善を続けています。
今後は、雨水や雑用水をトイレにて使用する工場の拡大や、排水を再利用する取り組みを検討していきます。
明治グループでは、複数の工場において蛇口に節水ノズルを設置し、水の効率使用に努めています。また、(株)明治の長野チーズ工場で生産しているチーズラインにおいて、従来はチーズ原料を冷却する熱交換器に使用する井戸水を、1回の通水で下水に排水していました。そこで、冷凍機を設置し井戸水を循環させて冷却に再利用することで、年間の水使用量を約16,000m³削減しました。

(株)明治戸田工場では、ドリンクヨーグルト原料を発酵タンクから貯液タンクに移す際、冷却に使用する工業用水の流量を種々の条件で検討し、最適化することで水使用量を削減しました(削減効果:約2,900m3/月)。

KMバイオロジクス(株)熊本工場の4つの製造棟では、中水※利用システムを導入しています。
このシステムは、中水の1次利用として、一部の生産設備から再利用可能な水を集め、冷却塔の補給水に使用しています。さらに、2次利用として冷却塔から排出される水をろ過・消毒し、トイレの洗浄水に使用しており、工場全体で年間約30,000m³の水を再利用しています。
※中水:飲用には適さないが雑用や工業用などに使用される水

水源涵養の取り組み
明治グループでは、2050年までに、製品原料として使⽤する⽔を100%還元する目標を掲げています。目標達成に向けて、2023年度までに27%以上、2030年度までに45%以上というマイルストーンを設定しました。
●水田湛水活動

KMバイオロジクス(株)では製品の生産に地下水を使用しており、環境負荷軽減活動の一環として水田湛水活動を行っています。水田から転用されている畑に対し、作物を植え付ける前の約3ヶ月間、近くを流れる白川より取水した農業用水を湛水し、地下水の涵養を行っています。この取り組みは2005年より継続し、本社および熊本工場で使用される地下水の量よりも多い年間約50万トンの水を涵養しています。
2022年度の実績として、約70万トンの水を涵養しました。
また、地域一体となって健全な地下水環境の整備に取り組むために2012年から「くまもと育水会」に加入し活動しています。「くまもと育水会」はこれまでの研究結果を踏まえた、効果のある地下水保全対策の実施に取り組み、地下水環境の改善を図る団体です。KMバイオロジクス(株)は同会員として、地下水保全に関するシンポジウムへの参加や、従業員によるウォーターオフセット米の購入を通じて、地下水保全に関する啓発活動を行っています。2022年度はウォーターオフセット米事業を通じ、推定36,500m3の涵養に貢献しました。 また、2021年度には同団体が実施する「地下水保全顕彰制度」へ応募し、地下水涵養や水の適正使用、従業員への啓発など地下水保全に取り組んでいる企業として、ゴールド、シルバー、ブロンズの3段階のランクのうち「ゴールド」ランクの認定を受けました。
水質に関する取り組み
取水の水質に関する取り組み
明治グループでは、取水の水質に関し、取り組みを行っています。
一部の工場では製造ラインに不純物を除去するRO膜を導入し、原料水の水質に起因する風味不良を防止し、高い水準での水質基準を維持しています。RO膜とは、ろ過膜の一種で、水溶液中のイオンや有機物を除去できる分離膜です。

排水の水質確保/化学物質の適正管理による排水の水質確保
明治グループでは、日本国内において法令に定められた基準よりも、さらに厳しい排水に関する自主基準を設定し、水質汚濁防止に取り組んでいます。排水による環境への影響を減らすために、排水負荷の大きい工場やプロセスでは活性汚泥処理法やメタン発酵処理法などの環境技術を用いた処理設備を設置し、排水を制御しています。なお、2022年度において、排水の水質に関する法令違反が無かったことを確認しています。

●製品を活用した水リスクへの取り組み
明治グループの一部の工場では、明治が独自に発見・研究開発し、保有している固有の微生物菌(BN菌) の機能を生かして悪臭や油脂を分解することで、適正な排水管理を推進することに取り組んでいます。
BN菌(BN1001)は、1980年代後半に横浜にあった研究所の土壌で発見された自然由来の微生物です。元々は医薬品として研究開発が始まりましたが、油脂分解力に優れていることが分かり、さらに安全性も確認されたため、私たちにとって身近な水回りの衛生環境を改善することに応用できるように取り組んでいます。

このBN菌は枯草菌(納豆菌の仲間)として分類される有用微生物で、優れた油脂分解力を有する新種としてBacillus subtilis BN1001と命名し、特許(特許番号 第2553727:有用微生物及びその利用方法)取得と同時に産業技術総合研究所に寄託(FERM P-11132)しています。
BN菌について洪水に対しての取り組み
(株)明治のグループ会社である日本罐詰(株)は、2016年に河川氾濫による浸水被害を受けました。その後、災害対策として、高さ3.5mの防水壁を設置し、盛り土の設置を行うなど、洪水対策を行いました。
またMeiji Seika ファルマテック(株)では、ボックスウォール(仮設止水板)の導入や変電所防水提の新設などを実施し、水害対策の総合訓練を行っています。今後も、BCPの観点も考慮して洪水リスクの高い拠点から順次、取り組んでいきます。


水使用量の第三者保証
「明治グループ統合報告書2023」内の2022年度の水使用量実績については、信頼性を高めるため、デロイトトーマツ サステナビリティ(株)による第三者保証を受けています。今後も環境データの信頼性の向上に努めていきます。