生物多様性
貢献するSDGs


明治グループサステナビリティ2026ビジョン
活動ドメイン
サステナビリティ活動KPI(2021年度から) | 実績 | 達成目標 |
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2021年度 | 2023年度 | |
生産拠点における生物多様性保全活動実施【明治G連結】 | 61.9 % | 100% |
生物多様性に対する考え方
経済活動に伴い、森林伐採による生息地の破壊、環境汚染など生息環境の劣化などが原因で生物多様性の損失が急速に進行し危機的状況にあります。明治グループの事業は、生乳、カカオや乳酸菌、抗生物質に代表される微生物などの、豊かな自然の恵みの上に成り立っているため、生物多様性の損失は重大な社会課題であると認識しています。豊かな自然の恵みを将来にわたって享受できるよう、原材料調達から廃棄に至るサプライチェーン全体を通じた事業活動において、生物多様性への影響を把握し、その保全・再生に向けた取り組みを推進します。さらに、関連する条約や法令を遵守し自然と共生する社会の実現に貢献します。
生物多様性保全活動ポリシー
明治グループは、2020年10月に「明治グループ生物多様性保全活動ポリシー」を制定しました。生物多様性の損失が進む中、原材料調達から廃棄に至るサプライチェーン全体を通じ、自然と共生する社会の実現へ貢献していきます。
事業活動と生物多様性との関係性
明治グループは、食・薬の事業を通じて多岐にわたる生物資源や生態系に深く関わり、原材料の調達から廃棄に至るサプライチェーン全体において生物多様性に負荷をかけています。このことを認識した上で、生物多様性に配慮した活動や負荷低減、生物資源の有効利用、従業員の理解促進などに取り組んでいます 。

地域生態系の保護
事業活動が生物多様性に与える影響
明治グループでは、食品・医薬品の両セグメントで原材料調達から生産に至るサプライチェーンでの生物多様性への影響を把握しています。その結果をもとに、自然資本の保全・再生に向けた行動計画を策定し、実行しています。
セグメント | カテゴリー | 土地利用の変化 | 水資源の利用 | 気候変動 | 大気汚染 | 水質汚染・土壌汚染 | 廃棄物 |
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食品 | 製品製造 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
医薬品 | 製品製造 | ○ | ○ | ○ | ◎※6 | ○ | |
食品 | 乳 | ○ | ◎ | ◎※3 | ○ | ◎※7 | |
カカオ豆 | ◎※1 | ○ | ◎※5 | ◎※8 | |||
サトウキビ | ◎※1 | ◎※2 | ○ | ◎※5 | ◎※8※9 | ||
パーム油 | ◎※1 | ◎※4 | ◎※5 | ◎※8※10 | |||
大豆 | ◎※1 | ◎※4 | ◎※5 | ◎※8 | |||
医薬品 | 鶏卵 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
食品・医薬品 | 木材(紙) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
【主なリスク発生事例】
- ※1森林から農地への転換
- ※2農作物の灌漑栽培
- ※3消化管内発酵によるメタン排出
- ※4焼畑による泥炭地火災
- ※5焼畑によるPM2.5発生
- ※6工場排水に含まれる化学物質
- ※7放牧による水質汚染
- ※8途上国の毒性・残留性の強い農薬使用
- ※9施肥による排水先の水質汚濁
- ※10パーム油工場排水による水質汚染
主要原材料に対する水リスクの影響
明治グループが自然の恵みを持続的に享受し続けるために、主要原材料の生産地における水リスクを分析しました。
主要原材料 | 水ストレス | 渇水リスク | 洪水リスク | ||
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将来 (2030年) |
将来 (2040年) |
現在 | 将来 (2030年) |
将来 (2050年) |
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乳 | ○ | ○ | ○ | △ | ▲ |
乳原料(海外) | ○ | ○ | ○ | ▲ | ▲ |
カカオ豆 | ○ | ○ | △ | × | × |
サトウキビ | △ | △ | ○ | ▲ | ▲ |
パーム油 | ○ | ○ | △ | ▲ | ▲ |
鶏卵 | △ | △ | △ | × | × |
木材(紙) | ○ | ○ | ○ | △ | ▲ |
- 水ストレスと渇水リスクは、一部の地域を除き低い
- 洪水リスクは、将来的にほとんどの地域で高くなる。生産地ごとの洪水リスクを確認し、改善策の検討が必要
水リスクとは
- 水ストレス:水に対する需要量のひっ迫度(水資源の需給バランス)
- 渇水リスク:干ばつの発現可能性や干ばつによる影響
- 洪水リスク:洪水の発生可能性
生産拠点やサプライチェーンにおける活動
明治グループ所有地における生物多様性リスク評価
明治グループの事業活動によって生物多様性に影響を与える可能性について、67の自社生産拠点について生物多様性評価ツールであるIBAT※1を用い、生産拠点からおよそ半径10km圏内(総面積210ha)※2を調査対象とし生物多様性の重要エリアの近接状況を調べました。重要エリアとしては、自然保護地域(世界遺産、ラムサール条約湿地、ユネスコMAB、IUCNカテゴリーⅠa・Ⅰb・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ)、生物多様性の保全の鍵になる重要な地域(Key Biodiversity Area(KBA):主にImportant Bird and Biodiversity Area (IBA))、そしてIUCNレッドリストで、野生絶滅の高いリスクに直面している「危急(VU)」の種が1種以上生息する地域を対象としました。
その結果、53サイトで半径10km圏内に重要エリアが存在することが確認されました。
明治グループでは、環境ポリシーを制定し、法令遵守、環境負荷低減、生物多様性の保全に向けた取組みを進めており、2021年度は環境に関する法令違反・罰金はなく近接する生物多様性の重要エリアにおいて、私たちの事業が直接生物多様性を毀損するような事例を確認するには至りませんでした。
% | 生物多様性の重要エリアである自然保護地域 | KBA (主にIBA) |
IUCN レッドリスト |
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世界遺産 | ラムサール条約湿地 | ユネスコ MAB |
IUCN カテゴリー | |||||||
Ⅰa | Ⅰb | Ⅱ | Ⅲ | Ⅳ | ||||||
国内事業所(43拠点) | 0 | 7.0 | 2.3 | 0 | 0 | 7.0 | 0 | 93.0 | 46.5 | 30.2 |
中国事業所(6拠点) | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 16.7 | 16.7 |
アジア(日本・中国除く11拠点) | 0 | 0 | 0 | 0 | 9.1 | 0 | 0 | 0 | 54.5 | 54.5 |
北米・欧州(4拠点) | 0 | 25.0 | 0 | 25.0 | 0 | 0 | 0 | 25.0 | 75.0 | 25.0 |
全事業所合計(64拠点) | 0 | 6.3 | 1.6 | 1.6 | 1.6 | 4.7 | 0 | 64.1 | 46.9 | 32.8 |
- ※1IBAT (Integrated Biodiversity Assessment Tool) 生物多様性リスク測定ツール
IBAT Alliance (国連環境計画(UNEP)、世界自然保全モニタリングセンター(WCMC)、コンサーベーション・インターナショナル(CI)、バードライフ・インターナショナル)が開発した自然保護に関する最新の基礎データにアクセスできるアセスメントツール。 - ※2生産拠点での事業活動が生物多様性に直接的に影響を与える範囲ではないが、環境事故等における生物多様性の毀損を踏まえ半径10km圏内を対象範囲とした。
明治グループ所有地における生物多様性保全(こもれびの森)
明治グループが所有する企業緑地での生物多様性の保全活動を推進しています。その一例として、KMバイオロジクス(株)の菊池研究所にある「明治グループ自然保全区くまもとこもれびの森」で自然環境を調査し、保全に取り組んでいます。2021年8月には、緑の認定SEGES(シージェス)「そだてる緑」部門の「Excellent Stage2」に認定されました。従業員とその家族、地域住民を対象とした自然観察会や保全活動を実施し、生物多様性の理解促進と地域生態系の課題解決につなげています。


社会課題解決における生物多様性保全の取り組み | |
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持続可能な原材料調達における生物多様性保全の取り組み | |
自社拠点における生物多様性保全の取り組み |
自社拠点による活動
国内の生産拠点における活動
グループ会社を含めた生産拠点(47事業所)において、生物多様性保全活動を推進しています。
※昨年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のために、活動を中止したり、参加していた自治体の活動が中止されたりして実施率が低くなっています。 活動実績は19年度実績を掲載しています。
(株)明治 | 2019年度の事業所・グループ会社における生物多様性の保全活動 |
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Meiji Seika ファルマ(株) |
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KMバイオロジクス(株) |
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海外の生産拠点における活動
グループ会社の生産拠点(20事業所)に おいて、生物多様性保全活動を推進しています。
P.T.メイジ・インドネシアでは、パスルアン地域周辺の山地の傾斜地にある貯水池地域で、植樹を行っています。

自治体との協働による森づくり
●明治自然環境保全区(根室市)における活動
(株)明治では、2007年から2019年まで北海道根室市に所有していた社有地467haを自然環境保全区として、公益財団法人日本野鳥の会と連携しながら野鳥の保護や生物多様性保全活動を行ってきました。この活動により、絶滅危惧種であるタンチョウやオジロワシなどの生息数が保たれていることが確認できました。また年2回、従業員ボランティアによる植樹、森林整備、野鳥観察などを行っており、従業員の環境意識の醸成にもつながっています。この他、2010年からは子どもたちの環境学習を目的とし、日本野鳥の会と協働で地元の子どもと保護者を対象にした自然観察会の開催や、根室市などが主催する野鳥をテーマにしたイベントへの参加も積極的に行ってきました。
2020年近隣工場の閉鎖に伴い、同保全区を根室市に寄贈致しましたが、これまでの活動の意義を尊重し、今後も根室市と締結した協定をもとに地域社会と連携しながら、同地区の生物多様性保全活動を行っていきます。
2021年11月には、根室市が主催する同地区での植樹祭に参加しました。当日は、保全区の防鹿柵内にカラマツのコンテナ苗(根付きが良好で初期成長が速い)を50本植えるととともに、過去に従業員ボランティアが植樹した苗木の手入れも行いました。


●自治体との協働による活動
(株)明治大阪工場では、放置された人工林や竹林など荒廃した森林を広葉樹林化する、大阪府の「アドプトフォレスト制度」へ参加しています。また、四国明治(株)では、香川県が実施している「フォレストマッチング制度、協働の森づくり事業」に参加し、2014年7月に香川県、三豊市、三豊市神田財産区管理会と協定を締結。竹林の伐採やヤマザクラの植樹等の森づくり活動を行っています。


(株)明治の群馬工場、群馬栄養食工場、群馬医薬・栄養剤工場、栃木明治牛乳(株)では、会津森林管理署南会津支署が実施する「尾瀬大江湿原での鹿柵の設置作業」に参加し、ニッコウキスゲをはじめとする高山植物がニホンジカに食べられる被害を減らし、生物の生息環境や生態系の保全に協力しています。


国連機関・関連団体との連携
生物多様性の保全推進に向けては、様々なステークホルダーとの協同が必要となります。事業活動が与える環境負荷の整理や課題解決のための具体策の実行に向け、外部団体との連携を強化しています。
- 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラム
- 生物多様性のための30by30アライアンス