医薬品セグメント事業戦略
大胆に構造改革を進め、感染症対策をはじめmeijiにしかできない健康価値創造に集中します
医薬品セグメントは、事業基盤の強化と新薬創出に経営資源を集中するための構造改革を推進しています。いま日本が抱える社会課題である「経済安全保障」と「感染症対策」に貢献することで、事業成長を目指します。
経済安全保障では、重要物資のバリューチェーンの強靭化が重要な課題です。特に、必須医薬品である抗菌薬の安定供給が重視されています。現状、抗菌薬の原料は海外からの輸入に頼っていますが、私たちは抗菌薬のトップ企業として、ペニシリン系抗菌薬の原料の国内での生産体制確立に取り組んでいます。
感染症対策では新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、安心して使用できる安全な国産ワクチンが求められています。生産設備の拡充やアカデミアとの連携を強め、国産不活化ワクチンの早期供給に向けて取り組んでいます。また、メッセンジャーRNA(mRNA)に代表される先進的なモダリティの技術を獲得し、将来に向けて新たなワクチン開発の技術基盤を築いていきます。
グループスローガン「健康にアイデアを」のもと、医薬品セグメントは研究開発から営業の現場まで、ボトムアップでイノベーションを起こそうという気運が高まっています。構造改革を継続し、成長戦略へ投資できる体制を築き、meijiにしかできない健康価値を創造していきます。
事業概要
1946年にペニシリンの培養を開始して以来、感染症領域のトップメーカーとして、ワクチンによる予防から、抗菌薬による治療までラインアップを充実させてきました。また、新薬だけでなく、高品質なジェネリック医薬品を国内外に提供し、幅広い疾患領域において事業を展開しています。
売上高構成比
事業環境
国内では2021年度より毎年の薬価改定が実施されており、長期収載品やジェネリック医薬品が特に大きな影響を受けています。
海外では、新興国や開発途上国における経済発展により医薬品需要が拡大しています。先進国においては抗体医薬や遺伝子治療などモダリティが多様化する中で、画期的な治療が実現され新たな治療の機会が生まれています。
新薬の研究開発における難易度の高まりから、リスクを軽減するために開発と製造を別々の会社が担うという分業化が進んでおり、CMO/CDMO※市場が拡大しています。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、感染症はアフリカや一部のアジアの地域だけでなく、世界的な脅威として認識されるようになり、ワクチンや治療薬のニーズが高まっています。
事業戦略
ワクチン事業の強化
明治グループの医薬品セグメントはワクチンの開発・製造ノウハウを持つKMバイオロジクスと保管・配送や販売に強みを持つMeiji Seika ファルマで構成されており、開発・製造から物流、販売まで1つのグループで担えるワクチンバリューチェーンを構築しています。製販一体となったサプライチェーンマネジメントを強化し医薬品の安定供給に貢献するとともに、開発品目の実用化を目指します。新興・再興感染症の脅威は今後も繰り返すことが想定され、国内におけるワクチン開発・製造体制の強化が求められています。国内で長年の使用実績がある不活化ワクチンの開発技術に加え、新たにメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンの技術の獲得に取り組みます。また、有事の際にはパンデミック用ワクチンを作るデュアルユース設備を整備し、ワクチンの開発生産体制を強化していきます。
インフルエンザワクチンのシェア
29.3 % (1位)
市場規模728億円
新型コロナワクチンの開発
小児の定期接種ワクチンやインフルエンザワクチンの技術を活用した新型コロナウイルス感染症に対する不活化ワクチンの開発を進めています。現在、成人向けと小児向けの臨床試験を実施しています。幼児・小児の接種率が低迷する中、安全で有効な不活化ワクチンの早期供給を目指します。
抗菌薬の安定供給
明治グループは、抗菌薬の各系統の製品を揃え、全身性抗菌薬でのリーディングカンパニーのポジションを確立しています。開発から生産に至るまでバリューチェーンを国内で完結できる体制を築き、国内で50%以上のシェアを持つペニシリン系注射抗菌薬の安定供給を実現します。また、抗菌薬のトップ企業としての責務を果たすべく、現状は中国に依存しているペニシリン系抗菌薬の原料を国内で生産するべく体制の確立に取り組んでおり、2025年までには生産を開始する予定です。
全身性抗菌剤のシェア
23.2 % (1位)
市場規模1,904億円
CMO/CDMO事業の強化
2015年にCMO/CDMOの豊富な実績と大規模生産能力を有するインドのメドライク社をグループに加えました。厳しい品質マネジメントにより、高い品質の医薬品を低コストで生産する体制を構築しています。メドライク社のCMO/CDMO事業はグローバル製薬企業からの受注が好調で、近年売り上げ、利益とも伸長しています。市場やニーズが拡大する中、引き続き既存顧客との取引の拡大や新規取引の獲得に取り組みます。また、競争優位性を確保すべく、新たな剤型などの研究開発力の強化や、成長のための生産能力の増強を進めています。日本国内でもジェネリックメーカーからの受注拡大を目指します。
開発パイプラインの加速化
新型コロナワクチンの開発や抗菌薬が効きにくくなる薬剤耐性への対策となる薬剤の開発、尋常性乾癬を対象とした薬剤やバイオ後続品の開発が順調に進んでおり、今後数年以内の上市を目指しています。創薬研究については大学や研究機関などとの外部拠点を設置し、連携を複合的に進める「ネットワーク型創薬」に取り組んでいます。