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顔写真:田中明雄

田中 明雄

株式会社 明治
研究本部 ニュートリション開発研究ユニット ニュートリション開発2G長

顔写真:上田啓輔

上田 啓輔

株式会社 明治
グローバルニュートリション事業本部 ニュートリション開発部 スポーツ栄養G
博士(スポーツ医学)

粉末プロテインをはじめ、ドリンクやバー、ヨーグルトといった手軽なプロテイン商品も揃える「ザバス」。近年、アスリートではなくても、運動を楽しみながらプロテインを摂取するという習慣が広がっているのではないでしょうか。ひと昔前まで、プロテインといえばアスリートがカラダづくりのために“我慢して飲むもの”。そのイメージをどのように覆したのか、「ザバス」の研究に20年以上携わる田中と、現在飲料の開発を担当する上田に聞きました。

「ダマになって、まずい」を劇的に変えた技術開発

1980年、アスリートの栄養をサポートしたいという思いから誕生した「ザバス」。ブランド名は「Source of Athletic Vitality and Adventurous Spirit」の頭文字をとって名付けられたもので、全てのアスリートの「競技に挑む力とあふれでる冒険心の源」であり続けたいという意味が込められています。

その精神に基づき、アスリートの声をもとに商品改良を重ねてきましたが、2000年代前半までの粉末プロテインは飲みづらいものでした。水に溶けにくくダマになる上、たんぱく質原料の独特の風味をストレートに出したプレーンが主流で、それほど甘みがなく、アスリートたちは「おいしくないがカラダづくりのため」とストイックになって飲んでいたのです。

写真:2000年当時のプロテインについて語る田中氏

「私が研究担当になった2000年当時は、『食べるのも練習の一環』と捉えるアスリートが多くいました。明治がサポートしていたトップアスリートの中には、『ダマになるのがいいんだよね』なんて言いながら『ザバス』を飲む人もいましたね。」(田中)

写真:プロテインの課題について語る上田氏

「私の周りでも、他の食品などを追加し、味を変えるなどしてプロテインを飲む人が多かったです。私も学生時代にアメフト部に所属していたとき、バナナと一緒にジューサーにかけて、飲みづらさをごまかしていたんです。『体を大きくするために必要なものだけど、おいしく飲めない』というのが大きな課題でした。」(上田)

アスリートにとって、おいしく使いやすい商品にできないか――。そこで粉末プロテインでは「溶けやすさ」に着目して研究を進め、独自の「均質顆粒化製法」を開発して2020年から商品に適用しています。

「従来のプロテインは粉が細かすぎることで溶けきれずダマになっていましたが、均質顆粒化製法を用いて原料の粒と粒をくっつけ、小さ過ぎず大き過ぎない一定の大きさに加工することで溶けやすさを実現しました。」と田中は語ります。

シェイカーを使用しなくても水に溶けやすくなり、この溶けやすさが「ザバス」ならではの強みとなっています。

図:熱風を送りながら原料にバインダーを噴射することで粉末を混ぜ合わせ、徐々に大きな粒状のパウダーにしていく「造粒」技術のイメージ
「造粒」技術のイメージ
図:パウダーの大きさが小さいと溶け残り量が多く、ダマになりやすい。パウダーの大きさが大きいと溶け残り量は少ないが、溶けるのに時間がかかる。明治は特定のパウダーの大きさで水に溶けやすいことを発見
溶け残り量とパウダーの大きさの関係

原料の臭みを消し、おいしさを実現

一般的に、粉末プロテインのたんぱく質原料として使われるのはホエイプロテイン、カゼインプロテイン、ソイプロテインの3種類で、それぞれ独特の臭いがあります。その中でも、メインのたんぱく質原料として使われることの多いホエイプロテインは、牛乳に含まれる乳清たんぱく質を抽出したもので独特の乳臭さがあります。2000年代前半までの粉末プロテインは、シンプルなプレーン(バニラ風味)が主流で味のラインアップがあまりなかったこともあり、どうしても原料の臭みを感じてしまうものでした。

写真:2006年に発売した「アクアホエイプロテイン100」、「ホエイプロテイン100」、「シェイプ&ビューティ」
2006年発売の「アクアホエイプロテイン100」、「ホエイプロテイン100」、「シェイプ&ビューティ」

そこで、おいしさを追求して2006年に発売したのが、スポーツドリンクをイメージしたスッキリとした味わいの「アクアホエイプロテイン100」、ココア味の「ホエイプロテイン100」、女性向けの「シェイプ&ビューティ」です。これらを開発するために、まずは世界中からより風味の良い原料を集められる体制を整えました。

写真:プロテインの粉末を計量する田中氏

原料の風味は産地によって異なるため、それぞれの原料に合わせて研究員が味付けを考え、消費者に求められる味へと仕上げていったのです。おいしさや飲みやすさを重視した製品が登場したことは、アスリートなどの限られた人だけでなく、運動するあらゆる人たちに「ザバス」が広がるきっかけになりました。

根拠ある栄養設計が、ブランドの信頼に

「ザバス」には、発売当初からアスリートに栄養指導するチームがあり、アスリートの実態や声をデータにまとめ、商品の改良に活かしてきました。その中でも、アスリートが普段どのような食事を取っているか調査したデータは、「ザバス」の栄養素を設計・配合するための重要な指標になっています。

写真:MLBのシカゴ・カブス所属の鈴木誠也選手に栄養サポートをする株式会社 明治の管理栄養士・大前 恵さん。
MLBのシカゴ・カブス所属の鈴木誠也選手に栄養サポートをする株式会社 明治の管理栄養士・大前 恵さん。

「アスリートは強度の高い運動をするため、一般の人よりも多くの栄養素を必要とします。そのため、『ザバス』にはプロテインだけでなくビタミンやミネラルも配合するとともに、これらの栄養素について、厚生労働省が定める食事摂取基準よりも多い量を『ザバス』独自の目標摂取量として設定しています。そして、アスリートの食事調査から実際に摂取している栄養量を割り出し、目標との差分を摂取できるよう、『ザバス』に配合する栄養設計としています。」と上田は話します。

「こうした取り組みを実現できるのは、アスリートへの栄養指導チームがある『ザバス』ならではです。」

長年、アスリートの実態に基づいて栄養を設計し、配合を改良してきたことで、トップアスリートのみならず、部活生や運動愛好家まで「ザバス」ブランドへの信頼を築くことができました。そこに溶けやすさ・おいしさの改良が加わったことで、ザバスがより多くの運動する人に支持されるようになったといえます。

写真:ザバスの栄養設計について語る上田氏

また、「ザバス」の粉末プロテインは、2024年11月にインフォームドプロテイン認証を取得しました。これは、ラベルに記載されている「たんぱく質の量」と、実際に含まれている「たんぱく質の量」を検証する国際的な認証プログラムです。

写真:インフォームドプロテインのロゴ

プロテイン市場では長年にわたり、製品に記載されている「たんぱく質の量」の正確さについて世界各国で疑問の声が上がっていました。これに対して、信頼性の高いたんぱく質量の測定を実現したのがインフォームドプロテイン認証です。この認証の取得により、「ザバス」は世界を目指す土台を整えました。

ドリンクで、プロテインの可能性を広げる

2015年には、新たにプロテインドリンクを発売しました。これは、2013年に発売された「明治 スポーツミルク」が運動後に飲みづらいという声があったことを受け、「ザバスミルク」へ刷新、現在の「ザバス MILK PROTEIN」に至る商品です。

写真:2015年に発売した「ザバスミルク」
2015年に発売した「ザバスミルク」

味づくりにおいては、明治が当時サポートしていたアスリートがオレンジジュースにスポーツミルクを混ぜて飲んでいたことから、酸味などスッキリとした味なら運動シーンにマッチする飲料になるのではないかと着想を得ました。

しかし、「ザバス MILK PROTEIN」の原料であるミルクプロテインは、酸性にすると固まってしまい、酸味と高たんぱくを両立した飲料の実現は困難の連続でした。それでも試行錯誤を重ね、酸性の条件下でも固まらない「速攻吸収製法」を開発し、高たんぱくなのに酸味があってスッキリ飲める飲料を実現することができました。この速攻吸収製法を採用した飲料においては、胃の中でも固まらないため、より早くたんぱく質を体に吸収できます。

図:人工胃液内でのミルクプロテインの状態の比較。一般的な乳飲料はミルクプロテインが凝固するが、酸性ミルクプロテイン飲料は酸性下でも凝固しない
人工胃液内でのミルクプロテインの状態
図:酸性ミルクプロテイン飲料と一般的な乳飲料の、摂取後の経過時間による血液中総アミノ酸濃度を比較。酸性ミルプロテインのほうが血液中アミノ酸濃度が有意に増加し、吸収が速いことがわかる。
ミルクプロテインの体内への吸収

引用: Nakayama K, et al., "Post-Exercise Muscle Protein Synthesis in Rats after Ingestion of Acidified Bovine Milk Compared with Skim Milk." Nutrients, 9(10):1071, 2017.

飲料は1本あたりの金額が手頃で粉末よりも購入のハードルが低く、より多くの人がプロテインを手に取るようになりました。そして2023年には、20g/200mlという高濃度のたんぱく質含有量を実現した「ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 チョコレート風味」を発売。たんぱく質の含有量が増えるほど液体中の固形分が多くなるため、殺菌時に焦げ付きやすくなりますが、明治が蓄積してきた乳飲料の製造技術を活用して高いたんぱく質濃度とおいしさを両立しました。これは世界的に見てもトップクラスの高たんぱく濃度の飲料です。上田は、「明治の知見を活かすことで、新しい価値を付加した商品を展開していきたい」と今後の意気込みについて語ります。

写真:ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 ココア味 430ml
高たんぱくを実現した「ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 ココア味 430ml」
写真:ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 キャラメル風味 200ml
「ザバス MILK PROTEIN 脂肪0 キャラメル風味 200ml」

「ザバス」ブランドを世界へ

「ザバス」は、「溶けやすさ」「おいしさ」「栄養設計」へのこだわりと手軽な剤型の展開によって、アスリートだけでなく運動する多くの人へとユーザー層を拡大してきました。特に、ここ10年ほどは健康意識の高まりからフィットネスブームが続き、日本のプロテイン市場は大きく拡大し、「ザバス」も売り上げを伸ばし続けています。「ザバス」は市場シェアナンバーワンを誇るブランドとして、今後も幅広いニーズに応えた商品を展開し、運動する多くの人のカラダづくりをサポートしていきます。

プロテインは、1日よりも1週間、1週間よりも1カ月、1カ月よりも1年という形で続けることが重要です。そのためには飲みやすく、続けやすい味でなければなりません。これからもおいしさ、安心と栄養設計にこだわり続けていきます。(田中)

「ザバス」は、世界を代表するプロテインブランドになることを目指しています。将来的に、日本だけでなく世界中で手に取っていただけるプロテインブランドになれば、これほどうれしいことはありません。(上田)

品質を追求し続け、世界を目指す──。今後も、「ザバス」は進化を続けます。

写真:田中氏と上田氏