明治グループは、日々加速する企業のサステナビリティ活動に対する期待の高まりを認識し、新たに「明治ROESG®※指標」を目標として掲げ、より一層の活動強化を図るとともに、「2023中期経営計画」の最終年度には日本におけるサステナビリティ先進企業の一社と認められる状態を目指します。
また、事業活動を通じて社会の持続的発展に貢献し、信頼される企業グループを目指していくにあたり、多様なステークホルダーの要請や期待を把握し、それらに適切に応えていくために、「ESGアドバイザリーボード」を設置することにいたしました。
社外有識者の皆さまと意見交換をさせていただきながら、明治グループ全体のサステナビリティ活動の一層の活性化とパフォーマンスの向上を目指します。

  • ※:「ROESG」は一橋大学教授・伊藤邦雄氏が開発した経営指標で、同氏の商標です。

サステナビリティが
成長のエンジンに

サステナビリティで変革をおこす

社外有識者(五十音順)

  • ※社名、肩書き等は2021年12月時点のものです。
上垣内 猛 氏

上垣内 猛 氏
株式会社J-オイルミルズ 専務執行役員 油脂事業本部長補佐

プロフィール

ユニリーバ・ジャパン、西友・ウォルマート、サンスター・スイスにおいて、消費財事業や流通チャネルでグローバル視点の経営に携わる。ファイナンスやサプライチェーンを中心としたファンクションでの経験を積み、その後、3社におけるCEOとして経験は12年におよぶ。また、イギリス、シンガポール、スイスなど海外赴任も15年以上になる。2021年6月からJ-オイルミルズにて構造改革と成長戦略の両輪を回す戦略の立案を行い、12月より現職として油脂事業部の変革をリードしている。

小木曽 麻里 氏
SDGインパクトジャパン CoCEO

プロフィール

SDGインパクトジャパン代表。世界銀行(資本市場専門家、MIGA東京事務所長)、ダルバーグ日本代表、ファーストリテイリングのダイバーシティのグローバルヘッド、人権事務局長を務めた後、2021年SDGインパクトジャパンを設立。創業者兼CoCEOとしてESG投資の推進およびインパクトファンドの設立運営に携わる。インパクト投資についてはその黎明期より携わり、2017年に当時アジア最大規模となるアジア女性インパクトファンドを創設。更に近年はジェンダーを始めとした多様性促進の活動に広く携わっている。

ピーターD.ピーダーセン 氏
NPO法人NELIS代表理事

プロフィール

1967年デンマーク生まれ、日本在住30年。2000年からサステナビリティ経営に携わり、多くの日本企業のサステナビリティ戦略支援を行ってきた。現在は、世界の若手次世代リーダーを育成するNPO法人NELISの代表理事を務めると同時に、大学院大学至善館教授、丸井グループ社外取締役を務める。

第1回ESGアドバイザリーボード概要(2021年8月25日)

川村
これからのサステナビリティ活動は、時代性とオリジナリティが重要で、時代の要請をしっかり受け止めるのはもちろん、社員にも腹落ちをする明治らしい取り組みを大切にしたいと考えています。独りよがりの活動に陥ることなく、活動を進化させていけるよう、皆さまから忌憚のないご意見をお願いします。

――議題1:明治グループの「人権尊重の取り組み」について

人権の基本はすべての人を尊重する「リスペクトとケア」

松岡
明治グループの「人権尊重の取り組み」は、2018年のサステナビリティ2026ビジョン策定以降、強化を進めてきました。2019年にグループ人権会議を設置し、人権デュー・ディリジェンスを開始。特に優先して取り組むべき課題として選定したのが原材料調達に関する人権課題と外国人労働者についてです。2020年にはサプライヤー行動規範も制定し、一次サプライヤー74社に対し、エコバディス社のアンケートと明治オリジナルのアンケートを活用して評価を実施しました。基準値を下回ったサプライヤーには改善を促していくとともに、今後は国内グループ会社のサプライヤーや海外グループ会社へも拡大する予定です。
ピーダーセン
外国人労働者の中には、外国人技能実習生もいらっしゃるのでしょうか?
松岡
採用している会社は国内グループ会社で1社あり、ヒアリングなどを実施した結果、特に問題ありませんでした。製造委託先では技能実習生を雇用しているところもいくつかあることが分かっており、雇用実態について調査を進めています。
ピーダーセン
技能実習制度は、世界からは人を経済のゲームのコマのように扱っていると見られており、SDGsの目標8にも反しています。単なる最低限のチェックだけでなく、すべてのステークホルダーに対し、リスペクトとケアをベースに接する考えであることを発信すべきだと思います。
小木曽
外国人労働者の雇用実態に関して直接ヒアリングしているのは素晴らしいと思います。今後は、外国人労働者に向けたホットラインを設置することも検討するといいかもしれません。
上垣内
ホットライン設置は確かにいいと思います。以前私が勤めていたウォルマートでは、全世界にホットラインを作っていて、24時間通話が可能で各国のヘッドにすぐ情報が入ります。フォローアップも完璧で「すべての人を尊重する」企業文化があり、どんな些細なことにも対応していました。お客さまだけでなく社員のことも尊重し、「すべての人を尊重する、お客さまに尽くす、常に最高を目指す、倫理感のある行動をする」という4つの柱は今でも忘れません。やはりカルチャーになっていることが大切で、自然と行動に出るようにしたいですね。そのためには皆が覚えやすいキーワードが必要です。ウォルマートは「すべての人を尊重する」というシンプルな言葉で表現しており、これが200万人以上の社員の頭に常にある。そこがウォルマートのすごいところです。メッセージ性も考慮されるといいと思います。

――議題2:環境の取り組みについて

TCFDを通していかにトレードオンを見つけるか。それが企業としての大命題

松岡
TCFDへの取り組みは2019年に分析を開始し、今年で3回目となります。乳原料、感染症(抗菌薬、ワクチン)、カカオに関して、4℃と2℃の2つのシナリオを2030年と2050年の計4パターンで分析しています。事業領域ごとの主要インパクトに関して、リスク面は共通項でまとめられることが分かりました。ポイントは4つあり「洪水被害による損失」「カーボンプライシング導入によるコスト増」「電力購入コスト増」「原料調達コスト増」です。特に、原料調達への影響に関しては気候変動によるカカオ豆の収量減少、酪農家の暑熱対策費が増えることなど主要原料のコスト増が想定されます。商品の高付加価値化、ポートフォリオの最適化、価格改定などで吸収を検討しますが、将来の安定調達も危ぶまれる中、農家支援の強化も重要です。
古田
最近はバイサイドのESGアナリストも多く、TCFDをしっかり理解されていて、定量的な情報へのリクエストがかなり増えています。そこでわれわれも今回、Scope1、2のカーボンプライシング導入によるインパクトは開示という判断をしました。
川村
ただ、TCFDで主要原料の調達コストが上がるのなら、経営戦略も変えなくてはならないと思います。今までと同じではどうやってもマイナスになってしまう。事業のフレームワークをどう変えるかも考える必要があります。
ピーダーセン
その通りですね。分析がどんなに素晴らしくても、リスクを抑えるだけでは投資家のポジティブな評価は得られない。経営としてのストーリーが必要です。リスク分析の出来は素晴らしいと思いますので、今後は新しいオポチュニティをどう生み出すかを考えていく必要があります。コストアップになるだけならサステナビリティは足かせと捉えられてしまう。投資家もそこが一番の関心事です。
川村
つまり、TCFDの分析と事業の戦略転換はセットということですよね。そこは事業会社も含めて一生懸命考えています。一方で、TCFDの分析からオポチュニティを探すのは、それほど難しくないとも思っています。最近では社会課題の解決がビジネスに直結した事例として、COVID-19によるパンデミックは、ワクチンというビジネスチャンスを生んでおり、製薬会社は大きな売り上げを得ています。われわれも発想を転換することで何かしらのチャンスがあるはずです。
例えば、チョコレートの主要原料であるカカオは、実は真ん中の種子しか使っておらずほとんどを捨てています。でも、そこにも繊維質など有用成分がある。これまで活用できていなかった部分を使って新しい提案ができるようになると面白いと思っています。
ピーダーセン
確かに、農業廃棄物は世界的に注目されています。オポチュニティに繋がる可能性があると思います。既存の事業で稼ぎながら、新しく探求できる領域にチャレンジする。可能性はいろいろあると思います。
川村
生乳に関しては牛が排出するメタンガス、糞便の中の一酸化二窒素の課題がありますが、その課題を解決できれば環境負荷の少ない生乳が実現できます。そういった提案が乳の付加価値を上げることに繋がり、皆さんの健康にもっとポジティブに貢献できるようになるはずです。
上垣内
何が提供できるか、企業の存在意義は何か。TCFDのディスクローズが目的になって、本当の企業の存在意義が見えなくなってしまうと意味がありません。手段と目的をしっかり見ておく必要もありますね。
ピーダーセン
気候変動対策はしっかり取り組まなければいけない課題ですが、そこにトレードオンを見つけることが経営です。トレードオフのままにしておくのは企業経営とは言えません。これからの戦略はTCFDの分析を通してトレードオンをいかに見つけるか。これこそが経営者である皆さんの仕事です。
川村
本当にその通りだと思います。トレードオンの戦略を同時に提示したTCFDを見ていただくことが必要ですね。われわれは酪農家やカカオ農家といった農業者と接点を持っています。農業は本来オフセット側なので、そこに新しいビジネスを提案できれば新たな価値創造に繋がるかもしれない。そうした発想も必要ですね。
ピーダーセン
ここ数年ご一緒させていただいて、明治グループはものすごく進化していると思います。活動の土台はしっかりできている。次のステージに進むには、グループ横断の取り組みが必要です。グループ連携で事業イノベーションを見つけていくことが、次のステージだと思います。
小木曽
ここ最近、明治グループとフードテックやアグリテックの話をさせていただいていますが、この領域にはここ最近急激に資金が流入しています。気候変動を解決しながらのオポチュニティに注目が集まっているので、こういう動きをうまく取り入れていくと、明治グループと一緒に働きたいというスタートアップもたくさん出てくると思いますね。

議題3:明治グループのサステナビリティ活動全般について

明治グループの魅力を生かしたサステナビリティ活動へ

上垣内
すべてが自前主義でなく、明治グループの魅力を生かしてアイデアを取り込んでいくことが、すごく大事だと思います。今、私の会社では大豆を絞って、絞った副産物のほうに力を入れていこうとしています。新しいチームを作って発想を変えていこうと話をすると社員は共感し、投資家も共感する。ですから、ぜひ共感マーケティングを一緒に考えていけたらと思います。
小木曽
サステナビリティ部門の方々は、皆さんコストと利益どちらを取ったらいいのかをすごく悩んでいます。上からは指示されても現場は納得しない。トレードオンでの展開はとても大事ですが、バリューの共有がとても難しいので、いろいろなプロセスで話し合う機会を持って、バリューを拡散できると面白くなっていくと思います。
ピーダーセン
サステナビリティは第五の競争軸です。競争軸の1つめは自己変革。ビジネスモデルの刷新を時代に合わせてできるかどうかという観点。それから、マーケットシェア、価格、品質。この4つでこれまで勝負してきました。今後は、第五の競争軸となる「サステナビリティ」をどう扱うかで競争力が左右される時代です。サステナビリティを競争力に結びつけるということは、今日の会議に参加している全員の課題です。それができて初めて、未来の勝者になれると思います。
川村
もはやESGアドバイザリーボードではなくマネジメントそのものですね。とても勇気をいただくコメントです。
古田
今日は本当にありがとうございました。初めてのアドバイザリーボードミーティングでしたが、貴重なご意見をたくさんいただきました。人権に関しては、これをカルチャーにしていくところを肝に銘じたいと思います。またTCFDは、ご指摘の通り機会の深堀がまだ十分にできていません。来年はどうやって機会を獲得していくかについても提案していきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。