{{item.title.replace(/“|”/g, '"' )}}

写真:株式会社 明治 グローバルカカオ事業本部 カカオマーケティング部 CXSG 晴山 健史

晴山 健史Takeshi Hareyama

株式会社 明治
グローバルカカオ事業本部 カカオマーケティング部 CXSG

写真:fabula株式会社 代表取締役 町田 紘太 氏

町田 紘太 氏Kota Machida

fabula株式会社
代表取締役

2023年、明治は初の「食品ではない」ブランド、「CACAO STYLE」を立ち上げました。これまで積極的に利用されてこなかったカカオの未活用部位を活用し、ライフスタイルに寄り添う商品を提案しています。

食品以外でカカオを使うって、どういうこと?と思う人も多いかもしれません。そこで、プロジェクト担当の晴山と、パートナー企業の一つであるfabula株式会社の町田さんに、ブランド立ち上げの背景や商品開発について詳しく聞きました。

カカオの新たな活用方法に挑戦する

発端となったのは、「ひらけ、カカオ。」プロジェクト。明治がカカオの新たな可能性に挑戦するため、2022年からスタートした取り組みです。
カカオは、チョコレートの原料として知られていますが、実際に使用されているのはカカオの実の種の部分である「カカオ豆」のみ。発酵に使われる果肉とカカオ豆を合わせても、3割ほどしか有効に活用されていません。カカオをフルーツとして捉え直し、カカオを丸ごと使い切ることで、カカオの価値を高め、生産農家に還元していくことをコンセプトとしました。

イラスト:カカオの実の部位

晴山は、このプロジェクトに参加したきっかけを次のように語ります。
「研究所時代にカカオの産地に興味を持ち、プライベートで現地を訪れました。地域によりますが、カカオ産地は小規模な農家さんも多く、決して豊かとはいえない暮らしや、多くの手作業に支えられていることを目の当たりにしました。それがとても心に残り、農家の皆さんに貢献できるような仕事がしたいと考えるようになりました。そんなときに『ひらけ、カカオ。』が始まり、ぜひ関わりたいと自ら手を挙げました。」

写真:晴山が訪れたマレーシアのカカオ農園
晴山が訪れたマレーシアのカカオ農園
写真:マレーシアの農園にあった家屋
農園にあった家屋

プロジェクトパートナー「fabula」との出会い

晴山が取り組んだのは、「カカオハスク」の活用。カカオハスクとは、チョコレートを作る過程で取り除かれるカカオ豆の「皮」のこと。日本だけでも、その量は年間約5,000tに上るといわれます。肥料や飼料などに使用されることはあったものの、積極的な活用方法は検討されてきませんでした。

写真:カカオハスク
カカオハスク

カカオハスクの活用方法を探るなかで、プロジェクトパートナーとして出会ったのが、東京大学発のスタートアップ、「fabula(ファーブラ)」です。fabulaは、「未利用食品から新素材を作る」ことをテーマに掲げた企業。規格外の野菜や加工時に出る端材などの食品廃棄物から、コンクリートほどの強度を持つ新素材を生み出す技術を持っていました。
fabulaと明治はあるイベントで出会いました。fabulaの町田さんは、これまで約100種類の食材を試してきましたが、カカオハスクについては知見がなく、原料として面白そうだという考えから、明治へ声を掛けたと振り返ります。

晴山は次のように話します。
「食品由来のものでコンクリートほどの強さの素材が作れるなんて、考えてもみなかったので、素直に驚きました。建材としての活用が期待されている点にも大きな可能性を感じました。」
fabulaの技術を用いて、カカオハスクを価値あるモノに変えられないだろうか──。こうして明治とfabulaの共創が始まりました。

写真:プロジェクトについて話す晴山

個性はそのままに、価値ある資源に"生まれ変わらせる"

明治とfabulaは、さっそく試作品の開発に取り掛かりました。fabulaの技術は、食品由来の原料を乾燥させて粉末状にした後に、熱と圧力を加え成形するというもの。100%食品由来でできているため、その食材の色や風合い、香りを楽しめるのが特徴です。カカオハスクでできた素材は──そう、チョコレートのような香りがします。
カカオハスクはもともと除去されていた存在であり、色調や水分にバラつきがありました。乾燥の具合、かける熱や圧力などの条件をデータとして蓄積しながら開発を進めていきました。

写真:粉末状になったカカオハスク
粉末状になったカカオハスク
写真:カカオハスクの粉末を、熱と圧力を加え成形する様子
カカオハスクの粉末を、熱と圧力を加え成形

特に苦労したのはコースターの製作だった、と2人は口をそろえます。
カカオハスクは吸湿性が高い特徴があるため、コースターとして必要な耐水性を持たせるためには、コーティングが不可欠でした。しかし、コーティングをすればするほど、カカオの香りは消えてしまうのです。香りが残りながらも十分な耐水性を確保できるよう、何度も何度も試作を重ねました。

写真:コースターを手に話し合う晴山と町田氏

「カカオハスクのサンプルを頂いたとき、とても香りが良くて、それを最大限活かす商品作りがしたいと思いました。カカオの色や香りを残すことで、その背景にある物語を次のモノにつないでいきたいと考えていました。」と町田さんは話します。

晴山は、次のように当時を振り返ります。
「fabulaさんの考えを聞いて、とてもすてきだと思いました。アップサイクルとなると、それを実現する技術や、その取り組み自体に注目が集まることが多いですが、多くの人に手に取ってもらうためには、製品の魅力づくりが重要だと思います。香りという魅力をどう活かすか一緒に考えてもらい、非常にありがたかったです。」

多くの人に手に取ってもらうためには、製品の魅力づくりが重要だと思います。

カカオに関わる全ての人を、もっと笑顔に

明治は、こうした試行錯誤を経て完成したさまざまな製品を、「CACAO STYLE」ブランドとして発表しました。現在、その製品は、fabulaのほか、さまざまなパートナー企業を通じて販売されています。

ブランドについて、まずはもっとたくさんの人に知ってもらいたい、と晴山は話します。
「製品の展開においては、ワクワク感、楽しさを大切にしたいと考えています。メディア発表会で披露した"CACAO STYLE ROOM(カカオの部屋)"もその一環です。fabulaさんが製作した床材を使っているので、空間がチョコレートのような香りに包まれています。その中でカカオハスクからできたさまざまな製品を手に取ってもらうことで、よりカカオを身近に感じてもらえると思います。」

写真:メディア発表会で披露した"CACAO STYLE ROOM(カカオの部屋)"
メディア発表会で披露した"CACAO STYLE ROOM(カカオの部屋)"。

fabulaとの挑戦も続きます。町田さんは目標を次のように語ります。
「建材への活用を目指して改善を進めていきたいです。より大きな製品になれば、カカオハスクの使用量を増やせるだけでなく、建設業界の課題解決にも貢献できるはずです。」

写真:目標について語る町田氏

晴山はビジネスとしてのスキーム作りにも取り組んでいきたい、と話します。
「未利用資源のアップサイクルだけでも社会的な意義はあると思いますが、将来的には、もっとカカオ産地に貢献できる仕組みをつくりたいと考えています。カカオハスクでできた製品をお客さんに手に取ってもらい、その売り上げからカカオ農家へ還元するといった良い循環を生み出せたら。カカオに関わる全ての人が、もっと笑顔になれるように、これからも挑戦を続けていきます。」

カカオに関わる全ての人が、もっと笑顔になれるように、これからも挑戦を続けていきます。

写真:晴山と町田氏