Meiji Dairy Advisory(MDA)の取り組みに参加する北海道・別海町の中山農場を紹介します。ロボットを導入して生産性を高め、持続可能な新しい酪農のスタイルを目指す、中山勝志さんと中山泰輔さんにお話を聞きました。
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中山勝志さん
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中山泰輔さん
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最新テクノロジーの導入で
加速する社会変化に対応する
戦後間もない1959年、生乳生産量全国1位の北海道・別海の地で3頭の牛を飼い始めたのが中山農場の原点です。その後、1996年に家族経営から法人経営へ切り替えるとともに、規模を拡大、機械の導入を進めてきました。最新鋭の機械を取り入れた牛舎は、24時間自動で換気が行われ、温度や湿度を調整します。また、牛の首につけたタグで活動量を測定し、健康状態がいつでもタブレットで確認できるように見える化が徹底されています。
牛舎のデジタル化を急速に進めるのは、社会の変化に応じて「酪農も変わらなければ、持続していけない」という危機感を持ち、時代の流れを見定めてきたからです。「酪農もハイテクの時代。これからは、ますますデジタル化が進み、時代を読んだ改革を進めなければ取り残されてしまうでしょう」と話す会長の中山勝志さん。
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搾乳ロボットに入る牛。
首につけたタグの情報を機械が読み取り、個体情報を識別。 -
哺乳ロボットからミルクを飲む仔牛。
道東の異業種の企業とともにSDGs推進協議会を立ち上げるなど、持続可能な地域づくりにも貢献しています。その取り組みの一つが、バイオマス事業。「牛舎の自動化によって、生産性は確実に向上していますが、同時にエネルギーにかかるコストが激増しています。ですから将来的には、ふん尿によるバイオマス発電で農場全体のエネルギーを100%まかなうといったエネルギー循環型の農場にするのが目標です」(中山会長)
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飼料のトウモロコシや牧草は、海外からの輸入に頼らず、農場内で自給自足を進めています。こうした先進的な酪農スタイルが、地域に与える影響も大きくなっています。「畜産農家のほか、流通、農業、行政といった地域の関係者と連携し、収益向上のモデルをつくることで新規就農者にも夢を与えられるし、地域全体の活性化にもつながると考えています」(中山会長)
近い未来、バイオマスから水素ガスを分離・精製し、農機具の燃料として使えるようになれば、農場内でのエネルギー循環体制が構築できるという。
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近い未来、バイオマスから水素ガスを分離・精製し、農機具の燃料として使えるようになれば、農場内でのエネルギー循環体制が構築できるという。
変革の中で農場が直面した
組織としての強さの必要性
農場の一大改革ともいうべき、新たな営農スタイルを模索するにあたってMDAがマッチしました。「MDAを利用して改めてありがたく感じているのは、組織づくりのサポートをしてくださったこと。まず育成・個体管理など、担当別のチーム体制にしました。それぞれにリーダーを置き、スタッフに託すところは託す。役員は農場全体を俯瞰するという仕組みを提案してもらいました」(中山会長)
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MDAのサポートでミーティングの運営方法を見直しました。毎月1回、役員が集まり開催する会議のほか、コンサルタントや獣医師、明治グループが参加する「技術会議」や、チームリーダーと社長、明治グループが参加する「リーダー会議」を開催します。また、年に1度、スタッフを全員集めて年間の活動実績や計画を報告しています。会議に役割を持たせ、農場の事業計画を決める連絡や相談は適宜行える環境を整え、改善活動には明治グループが参加しています。
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定例で行われるリーダー会議。
〈MDAと中山農場の組織とのかかわり方〉
3年前から、3代目社長である泰輔さんにバトンが渡されましたが、変革の中で組織として農場を強くする必要性を感じたことがあるといいます。「酪農というと、昼夜関係なく働くというようなイメージがありました。しかし、自動化、組織化によって、働く時にはしっかりと働き、アフターファイブも充実させることができるようになっています。そうしたメリハリのある働き方が、これからの酪農の新しいスタイルになっていくのではないかと思います」と泰輔社長。
新しい働き方を模索する中で、MDAが提案したのが人事評価制度です。「スタッフ一人ひとりの目標に対して、同じものさし、基準で評価したい。そして、常に会社から見てもらえていると思える環境をつくりたいと考えていました」(泰輔社長)
これを受けて、MDAとしてスタッフに向けたジョブヒアリングを実施、泰輔社長やリーダーの意見も盛り込んだ人事評価の基準が作成されました。数字的な業績目標も個々人に意識してもらいながら、技術・能力をサポートする項目を設け、チャレンジ意識など、目に見えにくい部分も評価に取り入れています。
これにより、スタッフ個人の“がんばり”を適切に評価できるため、自主性を尊重し、モチベーションアップも期待されています。
目標を明確にすることで、専門性の高いスタッフを育成できます。「各チームリーダーも面談を通してスタッフ個人が磨きたいスキルを知り、刺激にもなっています。互いが切磋琢磨して成長できる環境は、組織として強さを増すものと思います」(泰輔社長)
「明治グループの担当者は、農場の牛のことだけでなく、第三者視点で農場のことを考えてくれます。今、私が考えていることは、循環型農業で持続可能な酪農をつくっていくことです。そのために酪農家が知っておきたい情報を蓄積して、変化を起こしていきたいです。中山農場がそのモデルケースになっていけたら」と、勝志さんの代で始まった改革は泰輔さんに受け継がれ、明治グループと一緒になって新しい酪農のかたちを模索していきます。