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牛にやさしい、
環境にやさしい、
循環型酪農を目指して。 -
明治では、酪農家の方たちとともに、
循環型酪農に取り組んでいます。
有機酪農は、環境への負荷低減に配慮した
有機飼料での飼育、
牛にやさしい環境での
飼育という観点に配慮して行う酪農です。
環境や牛の健康にも配慮した
酪農のあり方を支援しながら、
新しい牛乳の価値をお届けしていきます。
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北海道網走郡津別町の
有機酪農家の方たちとつくった、
明治オーガニック牛乳。明治は、1997年頃より、「牛にやさしい」「環境にもやさしい」牛乳づくりの検討を始めました。津別町の酪農家の方々と連携し、オーガニック牛乳の開発をスタート。さまざまな試行錯誤の末、2006年に5軒の酪農家の方々が「有機畜産物のJAS規格」認証を取得し、販売に至りました。
「明治オーガニック牛乳」は、有機JAS規格の認証牛乳です。北海道網走郡津別町にある指定牧場で、有機農法の考え方に基づいた方法で飼育された乳牛から搾った生乳のみを使用しています。
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大事にやさしく育てる
乳牛は、ストレスの少ない環境の中、
管理の行き届いた牛舎で
大事に育てられています。
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牛一頭一頭にゆとりのあるスペースを確保。
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こまめな手入れ。
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搾乳後の牛たち。リラックスして寝転んでいる。
農地に還元 豊かな土づくり
乳牛の排泄物は、堆肥にされ、
農地への還元を行っています。
津別町では町の施設として堆肥センターを運営しています。
農家ごとに実施していた堆肥づくりの作業を請け負い、
各農家の作業時間短縮につながっています。
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推肥センター
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発酵中は70~80℃まで温度が上がる。
自然の力で飼料づくり
有機飼料は自然の力を活用し、
循環型農法で育てられます。
化学肥料や農薬を使わずに栽培する有機飼料の畑では、
デントコーンのすき間にたくさんの雑草が生えます。
これらを手作業や機械などで除草する必要があり、手間がかかるポイントです。
また、化学肥料を使わないことから、生育をよくするために
効果的な堆肥の散布や、土づくりなどの工夫が必要となります。
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有機の畑では、雑草も生える。
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慣行の畑では雑草があまりない。
有機飼料の給与
JAつべつの子会社として有限会社だいちを設立し、
2014年より飼料を生産販売するTMRセンター※1を運営しています。
これまで農家ごとに実施していた混ぜ合わせる作業を
TMRセンターで請け負い、各農家の作業時間短縮につながっています。
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TMRセンター
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TMRの原料となる発酵されたコーン。
TMRセンターとは:牧草などの粗飼料、トウモロコシなどの濃厚飼料の他、
ミネラル、ビタミンなど必要な養分を
すべて混合したエサである
TMR(total mixed rations:完全混合飼料)を製造する施設。
循環型酪農のこれまでとこれからについて、
津別町有機酪農研究会会長:
石川賢一さんにお話を伺いました。
失敗して失敗して、5年かかった。
有機牛乳は、本当に大変だった。
そもそも、「有機牛乳」とは、有機的な飼養管理された牛から搾られた牛乳のこと。化学肥料や農薬を使わずに生産された飼料を与えた牛を基本放牧し、予防を目的とした抗生物質等は使いません。有機JAS制度による細かい規程があります。
有機酪農を始めるきっかけは、明治さんからの一言でした。「有機酪農をやってみませんか?」というお誘いがあったんです。それが、1999年のこと。その頃、有機農産物の有機JASができたばかりで、僕らも有機酪農が全く分からない状態でした。
それを勉強するために、明治さんと津別から3人の酪農家、全国の有機に興味のある方々でヨーロッパに海外研修に行ったんです。ヨーロッパに行くと、有機牛乳をはじめ、いろいろな種類の牛乳があり、生乳の流通システムも確立されてました。それを見て、僕らも非常に興味を持ち、「津別町有機酪農研究会」を立ち上げたのが始まりです。
でも、有機に移行していくのは、本当に大変でした。有機牛乳ができるまでに、5年くらい。失敗に失敗を重ねながら、試行錯誤の日々でした。日本にはまだ前例がなかったから、農薬や化学肥料を使わずに、飼料作物を栽培する技術を持ち合わせていなかったんです。
有機牛乳は、
「土づくり」から始まる。
牛の飼い方だけではなくて、飼料も有機でなくてはいけない。有機栽培のデントコーンで牛なんて飼えるのか?と僕らもすごく不安になったし、周りも半信半疑でした。
ただ、その時から海外研修へ何回も行ったんです。ドイツ、オランダ、フランス、デンマーク等ヨーロッパを中心に、アメリカ、カナダ、ニュージーランド等にも行きました。
化学肥料を使わないで、デントコーンや牧草が慣行農法と変わらないくらい栽培されている。そういう成功事例をたくさん見てきたので、やはりこれでいこうと決意することができました。
有機牛乳は、「土づくり」からやっていくものだから、時間もかかるし、お金もかかる。いろいろアドバイスも受けながら、1年目より2年目、2年目より3年目と、有機飼料の収量がどんどん伸びていきました。やってみて分かったのは、化学肥料や農薬を使わなくても作物ってできるんだということ。
とはいえ、飼料の一部はまだ海外からの輸入に頼っています。ゆくゆくは、全部を自給飼料に変えていくことにも、今取り組んでいます。最近の世界情勢をみても、価格高騰や、海外から物資が輸入できない時に、堆肥とか尿を上手に使って、作物が生産できる循環システムが大事だと実感しています。
「昔ながら」にはこだわらない。
有機だからこそ、先進的な技術を。
有機だから「昔ながらの方法」ではなくて、有機だからこそ、「先進的な技術」を取り入れる。
私たちの牧場は、私と妻の、基本二人で経営しています。経産牛が65頭、全頭で130頭、敷地は、全部合わせていくと東京ドーム2個分になります。二人でやっていくために、作業効率を上げる工夫が必要で、考えたのが「外部委託」と「機械化」。
外部委託は、主に飼料関係です。飼料の収穫、飼料のミキシング、そして配送。それらをTMRセンターにお願いしています。酪農の1日の労働時間で、一番多いのが飼料関係なんです。1日4時間かかっていたのが、今は1日30分で終わります。
飼料の給餌も機械化しています。ただ、全てを任せきりではなく、自動給餌器で盛られている餌の量は、牛の様子を見ながら一頭一頭変えています。
飼料の有機栽培では、トラクターにGPSの自動操舵をつけることでデントコーン畑の除草を行っています。わずか数センチの誤差範囲に収めながらトラクターを走らせていく技術。人が運転するとこうはいかない。取り入れてもう3年くらいになります。
私たちの敷地で、飼料畑として確保できる面積には限界があるので、今は、飼料とバランスが取れている65頭の飼育が限界だと思っています。輸入飼料をいっぱい買えば、100頭でも200頭でも飼育することはできますが、それは、私たちの目指すところとは違いますから。
みんなのチカラをひとつにして、
国産有機飼料100%を目指したい。
円安や国際情勢の急激な変化が起こると、飼料自給率の底上げは大切だと、ほんとに思いますね。できれば北海道内、もしくは日本国内で生産された有機飼料100%で、牛乳を生産する方向に持っていきたい。
現在、約75%は自給しているので、あともうちょっと。でも、その「もうちょっと」のハードルが非常に高い。
私たちだけでは限界があるから、今もやってはいますが、有機の農産物を作っている方々にトウモロコシの生産をお願いするなどして、有機の輪を徐々に広げていき、国内生産100%に持っていきたいなと思っています。政府が推進している「みどりの食料システム戦略」にも期待しています。
ヨーロッパでは有機農業の大部分が飼料畑や牧草であり、山岳地帯の機械が入れないような所でも有機認証をとっているんです。そこにはもちろん、国も支援している。個人はもちろん、みんなで有機酪農をつくっていく流れが必要ですよね。
行政や町、そして農協。これまでも今も、彼らが自分たちの有機酪農をかなり後押ししてくれました。特に、農協に至っては、有機などの小ロットの物はなかなか扱いづらいのですが、津別農協は小回りもすごく効くし、支援もしてくれています。もちろん、行政も。町の公共牧場に、牛たちの育成のために放牧しているんですけど、そこも町が有機化してくれて僕らに貸してくれています。
有機牛乳は、時間も手間もかかる。
こだわりのおいしさを、
一人でも多くの人に味わってほしい。
週1回、津別町のはからいで小学校、中学校の学校給食に有機牛乳を出してくれているんです。牛乳のいちばんのヘビーユーザーである子供たちが、飲んだ後に「甘い!」と自然に言ってくれた。有機牛乳はやっぱり濃厚で、コクがありますからね。
2、3年前から、酪農教育ファームも始めています。小学校、中学校、高校の生徒が私たちの牧場に来て、有機の取り組みを学び、体験する。道外の専門学校生や高校生の受け入れもしています。道外から来た子は、やっぱり放牧地に牛が放たれているというのを余り目にしないので、珍しいのでしょう。 放牧地に半日くらいずっといたり、牛たちに混じって寝転んだりして楽しんでいます。
私たちは、明治さんと一緒にこの取り組みをずっと続けていきたいと思っています。有機飼料の国内自給率100%を目指していくことも、急にガラッとは変えられないかもしれませんが、少しずつ進めていきたいなと思います。
北海道のスーパーは、私たちの有機牛乳を大体置いてくれていますが、次は日本全国の飲みたいという人に届ける手立てを、明治さんも含めて一緒に考えていきたいですね。
時間と手間をかけてつくる牛乳だから、一人でも多くの人に飲んでもらいたい。つくる人がいて、味わう人もいて、そこまで含めて、循環型の酪農が成立するわけですからね。
石川賢一さまご夫妻
津別町有機酪農研究会会長
石川賢一さまご夫妻
津別町有機酪農研究会会長
2019年度の農林水産祭において、優れた活動や実績を上げた農林水産経営者を表彰する「天皇杯」を、津別町有機酪農研究会の石川賢一会長が受賞されました。主な受賞理由は「有機酪農の推進と有機農法での優良な自給飼料の栽培」です。