生産者と作り手とお客さまの架け橋になる。それが私の使命。 生産者と作り手とお客さまの架け橋になる。それが私の使命。

私がメイジ・カカオ・サポート(以下、MCS)に関わり始めたのは、2019年。カカオマーケティング部で「明治 ザ・チョコレート」(以下、ザ・チョコ)のブランド担当として、お客さまと商品をつなぐ役割を担うことになってから。MCSの当初のイメージは、研究所のメンバーがカカオ産地に出向いてカカオ豆の研究をしている、会社としてカカオ産地の方と一緒に困りごとの解決に取り組んでいる、という客観的なものでした。ところが自分がブランド担当になり、ザ・チョコが作られる背景や物語を深く知ってからは、ザ・チョコを手に取ってくださるお客さまに、MCSの活動を介して生まれた商品のおいしさや奥深さをどのように伝えればよいかと、深く考えるようになりました。

元々、明治では商社を通じて品質のいいカカオ豆を調達していましたが、「よりおいしいチョコレートを作りたい」という思いから、2006年に明治の研究員がベネズエラのカカオ農園を訪問したのがザ・チョコの誕生につながっています。研究員が何度も現地に足を運び、信頼関係を築き、チョコレートの原料となる高品質なカカオ豆を作ってもらえるようになるまで相当の年月がかかりました。現地の人に相手にされないことも多々あったそうですが、こうした研究員たちの地道な活動の積み重ねで、ザ・チョコという商品が生まれました。2020年にリニューアルし、現在はベネズエラ、ブラジル、ペルー、ドミニカ共和国の4カ国、それぞれの産地のカカオ豆だけを使い、産地ごとに異なる香りや味わいを楽しめるようになりました。

生産者とお客さまをつなぐ、ザ・チョコのブランド担当としての使命は、産地ごとにことなるカカオの香りや味わい、カカオの奥深さや魅力お伝えすること、MCSを通して見えてきたカカオ産地の現状や生産者との取り組みを知っていただくことだと思っています。お客さまにとってMCSの活動や原料であるカカオのことは知らなくてもいいことなのかもしれません。でも、ザ・チョコは原料であるカカオやその生産者なくしては作れないものなんですよね。当たり前にものがあふれる世の中ですが、その一つ一つに、さまざまな人の思いが刻まれていることを知るのと知らないのでは、そのものに対する感じ方も愛着度も変わってくると思うんです。ザ・チョコも同じ。全国どこでも購入できるザ・チョコだからこそ、その1枚に生産者、作り手などいろいろな人の思いや技術が詰まっていること、カカオへのこだわりを知っていただきたいです。

サステナブルなチョコレートを届けたい。だからこそ、「共感者」をつくる。 サステナブルなチョコレートを届けたい。だからこそ、「共感者」をつくる。

カカオ産地の農園では、カカオの木の高齢化や病虫害、栽培技術の周知不足などによるカカオ豆不足が発生し、今後チョコレートが食べられなくなるといった問題に直面した時期もありましたが、明治だけでなく、各企業がサステナブルな取り組みをしていることで、そうした状況は改善されつつあります。しかし、チョコレートを届けるには、まだまだ課題があるのも事実です。その一つが、決して豊かとはいえない産地の現状。MCSでは活動の一つとして、品質の良いカカオ豆づくりを現地の人と一緒に行い、それを適正価格で購入していただき、結果、カカオ農家の方たちが安定した生活を送れるような仕組みづくりをしています。

お客さまにはホームページやリーフレットなどでこの活動をお伝えしてきましたが、この先はお客さまにも参画いただけるような仕組みを作りたいと考えています。チョコレートの原料である「カカオ」に関わるすベての人が笑顔になれるように、少しでも応援したいと思ってくれる人を増やすため、産地での活動や取り組み、産地の人たちのメッセージを積極的に伝えていきたいと思っています。

とあるイベントで参加者の皆さんと一緒にザ・チョコを味わった時のこと。ザ・チョコを1〜2回噛み、口の中で溶かして味わうと、フローラルな香りやスパイス感が広がって、産地ごとのカカオの個性がより分かりやすくなることをお伝えしました。そうすると、参加者の皆さんの顔がパッと明るい表情に変わったんです。「楽しい」「おもしろい」「どうやってこのチョコは作られているんだろう?」とおっしゃってくださって。チョコレートの奥深さや楽しみ方をお伝えすることで、結果、興味関心を持っていただけると実感できた瞬間でした。本当に地道なことかもしれませんが、より深くザ・チョコを届け、より深く知ってもらうにはそのトリガーを何個も作って、一歩一歩、着実にお客さまと生産者と作り手、3者の距離を縮めていくことが大切だと感じています。

そして共感を増やしたいという思いは、お客さまにでなく、明治の社員に対しても同じです。現状、MCSの活動を全社員が熟知しているかといえば、そうではないと思います。この活動を知ることで、会社に誇りを持てると思いますし、いつも身近にある商品の見え方も変わってくるはず。こうした社員の小さな変化も、最終的に明治の未来の変化につながると思うんです。

チョコレートの新たな魅力を届けるため、生産者と作り手の思いを伝えきる。 チョコレートの新たな魅力を届けるため、生産者と作り手の思いを伝えきる。

明治のチョコレートが100年近くも皆さんに愛していただいているのは、身近な存在として、お客さまの生活に寄り添ってきたからこそ。明治のチョコレートの存在自体は変わらないでいてほしいと思っています。

その上でお客さまには、チョコレートを嗜好品として、もっと楽しんでいただきたい。原料であるカカオ豆の個性や素材としての奥深さを知っていただくことで、チョコレートをもっと好きになっていただきたいと考えています。そして近い将来、コーヒーやワインのように、チョコレートも産地や品種で選ぶことが当たり前になるといいなと思っています。

私は生産者でも開発担当でもありません。どちらかというと、お客さまに近しい存在なのかもしれません。そんな私ができるのは、お客さまに寄り添いながら、チョコレートに関わる人たちの思いをお伝えすること。これからも、MCSの活動から生まれたカカオ豆を使ったチョコレート、ザ・チョコを通じて、生産者や作り手の思い、そしてチョコレートの魅力と奥深さをお届けしたいと思います。

価値を運ぶ人。
鐘ヶ江明子(かねがえ・あきこ)

1999年に入社。営業調査部門を経て、2019年よりカカオマーケティング部で「明治 ザ・チョコレート」のブランドマネージャーを務める。「明治 ザ・チョコレート」を通じてカカオの奥深さ、楽しさを広めていくマーケティング活動に従事。

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