リスクマネジメント

基本的な考え方

明治グループは、企業活動に重大な影響を及ぼす緊急事態の発生時における対応だけでなく、さまざまな経営リスクの発生を未然に防ぐこと、および経営リスクの回避・軽減措置を講じることが肝要であるとの考えに基づいてリスクマネジメントを推進しています。

リスクマネジメント体制

明治グループでは、「明治グループ2026ビジョン」の実現に向けて新たな成長を促進するために、グループ全体の経営リスクを把握しリスクの低減化に適切に取り組むとともに、果断なリスクテイクに資するリスクマネジメント体制を構築しています。

また、グループ全体の経営リスクのマネジメント機能を強化するため、2021年4月にリスクマネジメント全般を担う部門として、監査役会とは独立したリスクマネジメント部を設置し、リスクマネジメント部を管掌する執行役員を任命しています。経営リスクをグループビジョンと一体化させ、これらグループ全体の経営リスクおよびその管理状況について、当社の経営会議において評価・確認の上、取締役会に報告し、取締役会が評価・監督することにより、経営環境の変化に即応したリスクマネジメントを実践できる体制としています。

さらに、食品セグメント、医薬品セグメントそれぞれの業態に適したリスクマネジメント体制の構築を推進するべく、定期的に情報を共有化し、課題を抽出して適切に対処します。加えて、各セグメントに共通し、または当社グループ全体に影響を及ぼすリスクに関しては、グループで速やかに共有化する体制を整備し、早期の認知・対応に努めるとともに、随時、リスクマネジメント部を管掌する執行役員が代表取締役社長CEOに報告しています。

事業継続計画(BCP)強化

大地震等の自然災害やパンデミックの発生など、甚大な被害をもたらす危機が発生した場合、BCPに関する明治グループの基本方針を定め、「食と健康」に関わる企業グループの責務として、早期に事業を復旧させ、必要としている方々へ医薬品・食品の供給責任を遂行できるように努めています。

従業員には継続的な意識づけや安否確認の定期訓練などを、事業インフラやシステムについては、設備の耐震強化や生産拠点の複数化、原材料の調達複線化、ITシステムのバックアップ体制強化など、全バリューチェーンでのBCP強化に取り組んでいきます。

事業継続計画(BCP)に関する明治グループの基本方針

明治グループの使命は、大規模な災害等が発生した場合においても、お客さまにとって必要とされる製品・サービスを提供し続けるため、以下の方針の下に事業継続計画を推進してまいります。

  1. 明治グループの関係者およびその家族の人命の安全確保
  2. 明治グループにとっての社会的責務の遂行
  3. 業務停止などによって生じる経営ダメージの最小化

明治グループにおける経営リスク

全社横断的な経営視点で適切にリスクを把握し、影響度を考慮した対応策を策定することは、リスクの軽減はもちろん、明治グループの持続的成長および新たな成長機会の獲得にもつながります。そこで「明治グループ2026ビジョン」で掲げる「事業ビジョン」「サステナビリティビジョン」「経営基盤ビジョン」の3つのビジョンに則して、「明治グループにおける経営リスク」を特定しました。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りです。

事業に関するリスク

2023年6月29日時点

  リスク 対応策 リスク認識の前年からの変化 グループにおける重要度
製品・サービスの販売・提供
  • 計画した製品の上市断念
  • お客さまのライフスタイル・価値観の変化
  • 明治グループの強みとする
    素材(乳・カカオ等)へのネガティブな風評
  • POC(Proof of Concept)の確実な取得
  • 市場トレンドの積極的情報収集
  • 環境や社会に配慮した商品開発
  • 明治らしい社会課題解決型製品・サービスの創出
  • 製品・素材に関する適切な情報発信
特定製品への利益偏重
  • 売上・利益構成比の高い製品の販売不振
  • 独自価値を最大化するマーケティング施策の実行
  • 製品ポートフォリオマネジメントの充実
  • 新市場や新規領域の探索
サプライチェーン
  • 原材料の調達不足・余剰、価格高騰
  • 生乳調達の困難化
  • 生産トラブル等による生産活動の停止
  • 物流起因による製品供給の不安定化
  • 原材料市場の積極的情報収集および調達戦略推進
  • 調達先の分散や代替原料の検討
  • 生産販売部門の連携強化
  • 省人 /無人化による物流効率化
技術進歩
  • デジタル技術の急速な進歩
  • 画期的な治療法・製法・製剤の台頭
  • 新技術導入検討の早期着手
  • 新たな製法・製剤の研究、アライアンス探索
法・制度
  • 企業活動に大きく影響する諸制度の改正
  • 薬価改定
  • 諸制度改正の早期情報入手と対応策の実施
  • 行政への適切な働きかけ
  • 薬価改定を受けない製品ポートフォリオの充実
海外展開、海外グループ会社
  • 社会情勢の急激な変化や戦争・テロの発生
  • 諸外国における想定を大きく超える諸制度の改正
  • 情報収集および対応策の早期検討・実施
  • 複数拠点からの製品供給体制の構築
事業計画等
  • 環境変化等によるビジョン、
    中期経営計画の未達成
  • コア事業の成長鈍化、
    海外市場や新規領域における計画未達
  • 固定資産・のれんの減損
  • 為替・金利変動
  • 独自価値のさらなる強化、
    新たな価値の継続的な探索
  • 海外市場における独自価値の提供
  • 収益性、成長性、生産性の観点での事業ポートフォリオ管理
  • 投資、M&A 計画における適切な意思決定、モニタリングの実施
  • 為替予約および固定金利での借入

サステナビリティに関するリスク

  リスク 対応策 リスク認識の前年からの変化 グループにおける重要度
環境との調和
  • 企業活動における環境への配慮
  • CO2排出量・フロン漏えい量の削減、再生可能エネルギーへの転換、排水・廃棄物処理の適正実施、ISO14001に準じた取り組み
  • 需給管理の徹底やフードロス対策
  • 環境に関する各種方針、ポリシー等の徹底
気候変動
  • 気候変動への対応
  • TCFDの枠組みに沿った気候変動シナリオ分析と戦略策定および情報開示
豊かな社会づくり
  • 持続可能な原材料調達
  • 人権への配慮、人権課題
  • 多様性への理解、多様な人財の活用
  • サステナブル調達原料(カカオ豆・パーム油)の比率向上
  • 酪農家をはじめとするサプライヤーとの協業・連携強化
  • 人権デュー・ディリジェンスを踏まえた課題解決の取り組み
  • 多様な価値観・能力を活かし合う組織・風土づくり
  • 調達、人権、社会等に関する各種方針、ポリシー等の徹底

経営基盤に関するリスク

  リスク 対応策 リスク認識の前年からの変化 グループにおける重要度
ガバナンス
  • 適時適切な経営の意思決定
  • 社内外のコンプライアンス違反
  • 取締役会の実効性の向上
  • グループガバナンス体制の強化
  • コンプライアンス・ソーシャルメディア利用の教育、各種方針・ポリシーの社内外への徹底
meijiブランドの
毀損
  • 品質不備、薬品の予期せぬ副作用などによる製品回収
  • 明治グループまたは製品への予期せぬ風評被害
  • 安全安心の徹底追求
  • 各ステークホルダーとの適切なコミュニケーション
人財・風土
  • 企業成長に必要な人財獲得および能力開発
  • 従業員エンゲージメント
  • 業務環境による生産性への影響
  • サクセッションプランの適切な運用
  • 従業員研修の充実
  • 従業員エンゲージメント向上施策の実行
  • 健康経営の推進、快適な職場づくり
情報資産の漏えい
  • 不正アクセス等による情報漏えいや
    システム機能の停止
  • 不適切な管理体制による情報の流出
  • 情報管理体制および情報セキュリティの強化
  • 情報管理の教育強化と各種規程・ポリシーの徹底
災害や不測の事態
  • 災害やパンデミックなど予期せぬ非常事態による
    企業活動の停滞・中止
  • 非常事態下の環境変化による製品需要の増減
  • 早期的回復に向けたBCP、リスクマネジメント計画の整備
  • グループとして幅広い製品ポートフォリオ保持

私たちは、取締役会で当社グループ経営リスクに対する2023年3月期における重点取り組みテーマを選定し、各事業会社の取り組みを確認しました。

2023年3月期重点取り組みテーマ

1.中国におけるカントリーリスクの確認

海外における社会情勢の急激な変化や戦争・テロの発生に対し、明治グループが注力している中国事業の継続を脅かす重大リスクの内容および重大リスクが発生した際の対応体制や、調達の中国依存度の状況および対応体制を確認しました。

2.画期的な治療法・製法・製剤の台頭

新型コロナウイルスワクチンにおけるmRNAワクチンの台頭を受け、昨年度に引き続き当該技術に対する認識・評価・対応および新型コロナウイルス感染症に対するレプリコンワクチン(次世代mRNAワクチン)の開発状況について確認しました。

情報セキュリティ

個人情報や機密情報の管理など情報セキュリティの強化に取り組んでいます。また知的財産の保護など、さまざまな情報管理に関する方針や規程類に基づき、情報セキュリティ管理を強化・実践するとともに、従業員教育の徹底や、進化し続けるIT技術の強化などに取り組んでいます。
お客さまへは事業ごとの相談窓口ならびにホームページで、また株主・投資家の皆さまへはIR活動や専用ホームページなどを通じて、必要な情報をお知らせしています。

基本方針

明治グループは、お客さまの個人情報を含む情報資産の安全を確保することが重要であるとの認識のもと、「明治グループ 情報セキュリティポリシー」とこれに紐づく各種の規程、ガイドラインを策定し、情報セキュリティの確保 ・強化に取り組んでいます。

明治グループ情報セキュリティポリシー

管理体制

明治グループは、情報セキュリティを経営リスクの一つと認識しています。情報セキュリティの管理状況は、明治ホールディングス(株)の経営会議において評価・確認の上、取締役会に報告され、取締役会が評価・監督する体制としています。 また、各事業会社に各関連委員会を設置し、情報セキュリティを強化することにより、実効性ある情報セキュリティ体制を構築しています。情報セキュリティに関する重大な事故その他の緊急事態が発生した場合には、明治ホールディングス(株)リスクマネジメント部を管掌する執行役員が、代表取締役社長CEOに報告しています。

取り組み

従業員教育

情報セキュリティ意識を向上するため、情報セキュリティに関する従業員教育と訓練を定期的に行っています。

情報セキュリティ従業員教育 実施状況

教育/訓練 内容 2021年度 実績 2022年度 実績
新入社員への教育実施率 100%(162人) 100%(168人)
eラーニング教育の実施率 85%(10,315人/12,137人中) 88%(10,727人/12,222人中)
eラーニングの実施内容 メールやWeb利用のリスクと対策について
(例)標的型攻撃メールおよび他社で発生したサイバー攻撃など
不審メール/標的型メール攻撃対応訓練の実施人数 11,217人 3,578人
その他の取り組み 取引先や当社従業員を騙る不審メール受信などの全社注意喚起やワンポイントレッスンなどを実施

対象者をランダムに抽出して実施

インシデント対応の強化

明治グループでは、セキュリティ脅威検知時のインシデント未然防止やインシデント発生時の被害拡大防止を図ることを目的に、インシデント対応手順を定めています。具体的には、各事業会社がCSIRT体制を構築し、対応フローの策定、訓練の実施、さらに事業会社間の連携を強化するなどの対策を実施することで、事業継続を支え、社会からの信頼性向上に努めています。

  • CSIRT(Computer Security Incident Response Team):組織内のコンピュータやネットワークにおけるセキュリティ上の問題を監視し、問題が発生した場合にはその原因解析や影響範囲の調査を行う専門の組織の総称。

CSIRT体制の事例:(株)明治

Meiji Seika ファルマ(株)、KMバイオロジクス(株)においても、同様のCSIRT体制を構築しています。

インシデント対応の内容

未然防止の準備として、電子媒体やPCの暗号化、IT資産管理、ログ監視などの対応を行っています。また、発生時には、アカウントロック、リモートワイプ(遠隔消去)、ログ調査などを行うことで、情報漏洩を防止する措置を取ります。
一方、組織がサイバー攻撃を受けた疑いがある場合に、検知、封じ込め、復旧を実施するための準備を体系的に進めています。

インシデント対応手順

インシデント対応の訓練

明治グループでは、毎年、定期的に インシデント対応の訓練プログラムを実施しています。訓練結果は各社の管掌役員に報告され、その結果を踏まえて、定期的に体制を見直しています。

サイバーセキュリティ対策

明治グループでは、ホームページサーバーやネットワーク等のIT環境に対して、第三者による模擬ハッカー攻撃を含む脆弱性診断を実施し、継続的にサイバーセキュリティを強化しています。

ソーシャルメディアリスク低減への取り組み

明治グループでは、ソーシャルメディアリスクの低減を図るため、SNS活用における各種ルールを設けています。また、社内ポータルサイトを活用した、従業員への啓発活動も行っています。

個人情報保護について

個人情報および特定個人情報の保護については、明治グループが保有するこれらの情報の重要性を強く認識しています。その上で、個人情報保護に関する法令や各種規範を遵守し、個人情報の適切な保護に努めています。

関連サイト

個人情報保護について

知的財産権への取り組み

著作権や意匠登録などの商標権をはじめとする知的財産権への意識の高まりや国によるさまざまな施策により、知的財産保護の重要性は年々増してきています。明治グループ各社は、製品や技術の研究・開発を通じて獲得した成果を知的財産として権利化し、明治グループならではの高付加価値製品を継続的に供給するために活用しています。

関連サイト

知的財産戦略
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